約 3,643,268 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/399.html
物心が付いたときからまりさはずっと箱の中に居た。 本当に、箱の外の記憶は無かった。 広さはそれほどではないがそれなり歩き回れる程度の大きさはあった。 普通のゆっくりの巣に比べれば天井は大分高めだろうが広さだけとればそこまで大差は無い。 箱の中には何も無く、ただ定期的に餌が与えられるだけ。 まりさが思うに、生まれてからずっと箱の中に居たような気がする。 一度か二度だけ箱を引っ越したような覚えもある、しかし定かではなかった。 ひょっとしたら産まれてすぐに箱にでも入れられて ペットショップでバラ売りでもされていたのかもしれないが まりさにはそんなことはわかるはずもなかった。 わかるのはまりさが一人ぼっちだということだけである。 そしてまりさは一度も「ゆっくり」と言った覚えさえなかった。 生まれた時くらいは言ったのかもしれない。 だが記憶のある間では一度たりとも「ゆっくり」と言った経験はなかった。 そもそも何か喋ること自体が無かった。 言葉が喋れないわけではない。 ゆっくりは喋る力だけは生まれつき持っている。 だが話す相手が居ないのでは喋っても仕方が無いのだ。 箱の中はまりさの出す音以外物音一つしない。 ただただ静かなだけである。 それも気が狂いそうなほどにだ。 まりさはまだ若いゆっくりだが孤独に心を蝕まれて若々しい覇気とも無縁で暗くさび付いていた。 確かに箱の中にはゆっくりが生きるために必要なものは全て与えられていた。 しかし唯一つ、そこにはゆっくりだけがなかった。 ある時、いつもの時間に餌が与えられずに数時間まりさは放置された。 しかしまりさは別になんとも思わなかった。 そもそも時間の感覚が殆ど無く、ただ空腹を訴える体を不思議に感じていた。 そのままぼーっと空を眺めながらこのままこの感覚に飲み込まれて消えてしまいたいとまりさが思った時 ぶぅん、という不思議な音が耳をくすぐった。 「!?」 まりさは驚いたが、声は出なかった。 余りに長い間聞いたことの無い自分以外の出した音に、喋ることさえ忘れていた。 音のする方を振り向くと緑色をした細身の何かが居た。 逆三角形の頭の二つの角にギョロリとした大きな目が付いていてそれでまりさのことをじっと見つめていた。 胴体からはさらに細い棒が延びていて、一番上から伸びた太めの二つの棒は折れ曲がり 鋭く、何個も何個も棘が並んでいた。 ゆっくりしていない形だと直感的にまりさは思った。 動きもそうだ、二本の棒を擦り合せてくりくりと盛んに首を動かしながらも、目だけは絶対にこちらから視線をそらさない。 そのゆっくりしてなさが恐ろしかった。 「ゆ、ゆっく…ゆっくりして、いっ」 まりさは恐る恐る、その珍客に向かって挨拶をしようとした。 この言葉にどんな意味があるのか 使うべき機会も使ったことも無いまりさにはわかるわけも無い。 だがそれでもゆっくりの本能がそういえと言っていた。 まりさは頬が引き攣りながらも愛想笑いを浮かべようとした。 まりさの口許がぴくりと痙攣した瞬間、緑色のソレは動いた。 「ゆひいいいいいいいいいいいいい!?」 まりさは産まれてから一番大きな悲鳴を上げた。 緑色のソレは背中の薄い板を広げたかと思うと一瞬でまりさの頭の上に乗っかり、肩から伸びた棒をまりさに添え力を入れた。 棒から伸びる鋭い棘が突き刺さり、触れた部分をズタズタにしていく。 初めて感じる痛みにまりさは狂乱し、体を揺すって振り払おうとしたが 強い力で押さえつけられその棒がしっかり皮に食い込んでまるで外れない。 だが皮に噛み付かれて切り裂かれる音を聞きながら、それが恐ろしくて仕方ないのに どこかどうでもいいと感じる自分もいるのをまりさは感じた。 このまま食べられて死んでしまうんだというのを受け入れているまりさがまりさの中に居た。 このまま消えてしまおう、とまりさは思った。 こんな時、他のゆっくりならこういうんだろう。 「もっとゆっくりしたかったよ」 と だがまりさはこう呟いた。 「ゆっくりしてみたかったよ…」 心の底から漏れた呟きだった。 まりさは目を瞑り力を抜いて緑色の何かに身を委ねようとした。 「がんばれ!!」 その時、頭にくっついた虫よりもさらに上の方から声がした。 まりさははっと目を見開いて天井を見上げる。 さっきのような音ではなく、確かに意味を持った声だった。 「ゆ…!?ゆ…!?」 まりさは必死に声の主を探した。 箱の天井の向うに、見たことの無い何かが居るのをまりさは確かに見つけた。 「がんばれ!いくのよ!」 言葉の意味はなんとなくわかった。 それは確か相手を応援するための言葉だった。 呆然とそれを見つめているまりさに それまで忘れていた饅頭皮を棘の並ぶ棒で切り裂かれる痛みが現実感を伴って蘇った。 「ゆ、ゆがああああああああああ!!!!!!!!」 まりさは体を無我夢中で動かして箱の中を暴れまわった。 このまま死んでしまいたくなかった。 声の主と話をしたかった。 まりさは産まれて初めて必死になった。 体を打ち付けすぎて逆に傷口から餡子が漏れるほど激しく箱の中を転がった。 気付いた時、緑のソレはバラバラになって潰れていた。 体の一部は体液を垂れ流してまりさにべったりとへばり付いたままだった。 「あ…あ…!ゆ、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 はっと我に返ってまりさは慌てて天井を見上げてゆっくりしていってね!と繰り返した。 まりさが初めて心の底からゆっくりしていってね!といえたのがその時だった。 しかしまりさが箱の上を見てもどこにもさっきの人影は見当たらなかった。 まりさはがっくりと肩を落として愕然と壁にもたれかかってぜぇぜぇと息を吐いた。 全身が疲れきっていたが瞳だけは未だに興奮冷めやらずに見開かれていた。 それから、まりさはずっと待っていても餌がいつもの様に与えられないので 空腹で空腹で、耐えかねて遂に恐る恐るバラバラに潰れた緑のソレに舌を這わせてみた。 ぺろり、と舐めるとそれまでの餌とはまるで違う、えぐみや苦味の強い感覚が舌を刺激した。 「はっ…ふっ…」 まりさはそれに怯えながらも、耐え難い渇きを感じついに緑のソレの残骸を口に放り込んだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~~♪♪♪」 うまかった。 胸のの奥深くからしあわせという言葉が湧き出して口からこぼれた。 無我夢中でバリバリグチャグチャと音を立てながらひとかけらも残さずに緑のソレを食べつくした。 まりさは興奮覚めやらぬまま、ぼーっと天井を見つめた。 ひょっとしたらあの時の人影がまた現れるかもしれないからだ。 まりさは自分と世界が確かに変わっていく感覚に、夜も眠れなかった。 次の日、また餌の時間には箱の中に珍客が現れた。 昨日と同じ、緑色のソレである。 まりさが警戒を怠らないように、ちらりと上を見ると確かに昨日の人影が見えた。 箱はすりガラスのようにざらざらした素材で出来ていて向うを完全に見ることは出来ないが 確かに誰かが箱の壁の向うに存在した。 まりさは今相対する緑のソレ以上にその存在に対して興奮した。 「ゆ、ゆっくりしてい」 「ぼーっとしてないで行った行った!」 まりさの言葉をさえぎってその人影から発せられた声に一瞬考えこんだ後はっとしてまりさは目の前を見た。 緑色のソレが羽を広げ、視界一杯にその逆三角形の顔を突きつけていた。 「ゆぎゃっ!?」 鋭い棒がまりさのおでこの両側を捕らえ、逆三角形の頭から生える牙が蠢きながら眉間に齧りついた。 「ゆぎぎぎぎぎ…!」 皮を切り裂かれる痛みにまりさはうめき声をあげたが、その実内心冷静だった。 そう慌てることは無い。 昨日と同じように壁に叩きつければ勝てるのだ。 まりさは痛みを堪えて、壁に向かって突進した。 「危ない!」 上方から悲鳴にも似た甲高い声が飛び出す。 ドンっ、と壁に頭をぶつけてふらふらとしながらもまりさは上に居る人影に笑みを返して安心させようとした。 その時、ブスリと何かがまりさの背中に突き刺さった。 「ゆびゃっ!?」 予想だにしない痛みにまりさは驚き、後ろを振りかえった。 しかし後ろに居るはずの何かはまりさに何かを突き刺しまりさを捕らえたままで後ろについて動いた。 「ゆぐっ、ぐうううう!」 まりさは今度こそと思って背中から壁に突っ込んだ。 ドシン、と音がすると同時に今とさっき、何が起こったのかを悟る。 頭上でぶうんと音がすると同時にまりさの目の前に緑色のソレは降り立った。 目を丸くするまりさに対して振り返り、鋭いその棒を振り下ろして頬を並んだ棘が裂いた。 「ゆぎっ…!」 餡子こそ出ないものの、斬られて数瞬してからゆっくり、かつ鋭くやってくる痛みにまりさは顔を歪めた。 まりさが驚きでじっとして居ると次々と鋭い棒が振り下ろされる。 再びあの棒で捕らえられるのを恐れまりさは後ろへと飛び跳ねるが緑のソレはそれ以上のスピードでまりさに襲い掛かる。 まりさのやわらかい饅頭皮はその棒が掠るだけで容易に、惨たらしくその表面を切り裂かれていった。 「恐ろしいまでの切れ味の鎌ね!」 ああ、この鋭い棒は鎌というのか… そんなことを思いながらまりさは彼女の声を聞いて昨日、初めてゆっくりしていってね!と言った時のことを思い出した。 思えば、あの時の自分のゆっくりしていってね!、はちゃんと彼女に届いたのだろうか。 声を発した時には、既に彼女の姿は無かった。 きっと届いていない。 ならあの「ゆっくりしていってね!」は独り言のようなものだ。 それで本当にゆっくりしたと言えるのだろうか。 きっと違う、とまりさは思った。 「ま゛だま゛り゛さ゛は゛ゆ゛っく゛り゛し゛て゛な゛い゛のおおおおおおおおおおおおおお!!!」 腹の底から、本当に心を込めた雄たけびが箱の中に響き渡った。 ずっと一人でゆっくりせずに居た自分が、彼女と言葉を通わせて初めてゆっくりすることの片鱗を見たのだ。 あと少しでゆっくりできるに違いないという確信がまりさの中にあった。 彼女と一緒ならきっとゆっくりできる。 彼女に自分のゆっくりを聞いて欲しい。 まりさもゆっくりしてみたい。 だからここで死ぬのは絶対に嫌だった。 ここで死んでしまったらゆっくりには届かず孤独なまま死ぬのだ。 そして傷だらけの体でまりさは飛び上がった。 実際にはそれほど大きなジャンプでもなかったがまりさにとっては空を飛ぶかのように大きな意味を持ったジャンプだった。 緑色のソレは羽を広げ飛翔し、それまでと同じように回避しようとする。 が、飛び上がった瞬間まりさの足にぶつかり、そのまま踏み潰された。 べちゃりという深いな感覚を足に感じまりさははっとしてあたりを見回す。 緑のソレはどこにもおらず、確かにこの下で潰れていることがわかった。 安全を確認し慌ててまりさは天井を見上げて彼女に向かって叫んだ。 「おねえさん!ゆっくりしていってね!!」 彼女は既に背を向けて立ち去ろうとしていたが、今度こそ確かに彼女に伝わったはずとまりさは思った。 鎌で惨たらしく切り裂かれズタボロになった顔で、まりさは最高の笑顔を浮かべた。 その日、まりさは顔が痛くて仕方ないにも関わらずに最高にゆっくりした気持ちで眠りについた。 朝起きて、まず上を見上げた。 あの人影は無かった。 しかし餌の時間に必ず姿を現すことを信じてまりさはわくわくしながら待っていた。 餌との戦いは命がけだが二戦連続で物にして相手を喰らったことがまりさに自信をつけていた。 傷もまだ治りきらず、動けば痛みが走るが負ける気はしなかった。 そして、衝撃で傷口から餡子が噴出してしまうほど何度もジャンプして緑のソレを踏み潰すことに成功した。 途中、餡子が噴出す痛みにくじけそうになったが例の人影から「その調子!」との声援を受けてなんとか自分の戦法を信じて頑張ることが出来た。 彼女の声援が無ければきっとまりさはくじけて自分を信じられなくなり負けてしまっていただろう。 まりさはこれまでの感謝の思いを込めて彼女に「ゆっくりしていってね!」と言った。 それから一週間ほど経った。 まりさは毎日ゆっくり眠って体を休め、朝起きるとすぐに天井を見上げて彼女の姿を探すのが日課になっていた。 初めてゆっくりしていってね!と言ったときから、彼女の存在はまりさにとって生きる支えとなった。 彼女と接して初めてゆっくりするということを学んだまりさにはもはや彼女無しの生活は考えられないようになったのだ。 彼女という存在があって、初めてまりさはそれまで重く圧し掛かっていた孤独というゆっくりしていない事象から開放された。 まりさのゆっくりは彼女による、彼女のためのゆっくりとなった。 まりさは彼女のことが好きで好きで仕方が無かった。 だから、毎日のように行われる戦いも、彼女の声援を受けられるのならば恐ろしくない むしろ楽しみなくらいだった。 彼女が戦いの際、声援を送ってくれるなら必ずそれに応えようとまりさは奮闘した。 彼女ともっと親しくなり、ゆっくりしたい。 彼女と心を通わせ、ゆっくりしたい。 そのために、生きて生きて彼女にゆっくりしていってね!と呼びかけ続けること。 それがまりさの今の生きる目標だった。 戦い、彼女の声援に応え勝利を手に彼女に「ゆっくりしていってね!」と 声をかける時に、まりさに最高のゆっくりを感じていた。 これこそ生きる、ゆっくりするということだとまりさは思った。 今日も、まりさの箱に珍客が放り込まれた。 それを見てまりさは緊迫して相手を凝視した。 それまでの緑の相手とは違い今度は黒く、短く、そして太かった。 その黒さにまりさは目を奪われた。 自分が身にまとっている大切な帽子と同じ色なのに 何故か禍々しさと恐怖を感じ、その存在感に威圧されてごくりと唾を飲んだ。 その顔つきの恐ろしさのためかもしれない。 まるで地獄の住人のような険しい表情を黒いソレはしていた。 相手の出方を伺い睨み合うこと数瞬。 黒いソレの恐ろしい表情を浮かべる顔から伸びる細い糸が ふわりと揺れたかと思うとキリッキリッ、と鋭い音がまりさの耳を劈いた。 びくりと体を震わせ一瞬視界から黒いソレが消えたかと思うとさっきと同じ鳴き声と そして何かを齧る音だけが箱の中に響き渡った。 「ゆ…ゆ…!?」 まりさは辺りを見回すが、箱の中はまるで何事も無かったかのように黒いソレが来る前となんら変わらない姿をしていた。 違うのはただあの黒い奴が発する鳴き声と何かを齧る音がまりさの耳に聞こえ続けている点のみである。 「ど、どおぢでなにもいないのにおとがきこえるのおおおおおおお!?」 箱中を見渡したが確かにさっきのは居ない。 しかし音だけは止まない。 齧る音が聞こえてもまりさに痛みは無かったがその止まない音の恐怖がまりさの心を蝕んだ。 「ゆうううう!ゆうううううううう!?」 恐怖にかられたまりさは箱の中を転がりまわった。 ごろごろと意味も無く箱の中を廻っている内に黒い黒いまりさのぽてんと帽子が落ちた。 流石にまりさも慌てて帽子を拾いなおそうとして、見つけた。 黒いソレはまりさの帽子をギチギチと顎を動かして齧っていた。 既に、小指が一本通る程度の小さな穴が開いていた。 「ま、ま゛り゛さ゛のだいじなぼう゛しにな゛に゛お゛ずる゛のおおおおおおおお!?」 まりさはこんな小手先で自分を騙していたことと大事な帽子に穴を開けられたことに激昂し それまでの恐怖も忘れて飛び上がって黒いソレを踏み潰そうとした。 その時、まりさは見た 黒いソレが自分より遥かに高く飛び上がる瞬間を。 「ゆぅ!?」 その跳躍の余りの高さにまりさは驚き、彼女の人影を探す以外の理由で初めて天を仰いだ。 黒いソレは帽子の上に突っ込んでしりもちをついているまりさの鼻先にどん、と飛び降りると ギチギチと顎を開いて鼻の頭に齧りついた。 「ゆぎぃ!!ゆぎゅぁああああああ!!」 慌ててまりさは転がって黒いソレを潰そうとするがそれよりも早く跳躍してまりさの間合いの外へと逃げ出した。 再びまりさが向き合うや否や、黒いソレの太く節くれだった足が爆ぜてて跳躍しまりさに飛び乗る。 そうしてまた同じようにまりさが振り払おうとすると傷を負うより早く黒いソレは飛び跳ねてまりさの手からするりと逃れた。 「も゛う゛や゛べでえ゛えええええ!だずげでぐだざいいいいいい!!」 完全なヒットアンドアウェイの前にまりさは何も出来ずに体中を齧られていく恐怖と痛みでぼろぼろと涙を流して命乞いをした。 「いいわよ!じっくりいきなさい!」 その時、天井の方からあの声がした。 それはまりさにとって天啓だった。 その声を聞くだけで、恐怖はすっと引いて行き、まりさは落ち着きを取り戻した。 痛みに歯を食いしばりながら 今、自分は相手の策に完全にはまっていることを認めて その突破口を探すために冷静に辺りを見回す。 とにかく突破口を見つけるまではじっくりといくしかないのだ。 「………ゆ!」 じっと黒いソレの攻撃に耐えながら、まりさははたとひらめき 帽子に向かって転がり走った。 黒いソレもまりさを追って跳躍する。 「ゆううううううううううん!!」 その瞬間をまりさは待っていた。 帽子を口に咥え、へこみの方を空高く跳ぶ相手に向かって突きつけた。 黒いソレはすっぽりと帽子の中にはまった。 「ゆっぎゅりゃあああああああ!」 確かな感触を感じてまりさはさっと帽子を地面に置いて黒いソレを捕らえた。 黒いソレが跳躍して、帽子にぶつかりぼとりと地面に跳ね返される音が中から聞こえてきた。 「そこでずっとゆっくりしていってね!」 まりさは力いっぱい優越感と憎しみを込めてそう言うと帽子に飛び乗った。 中に閉じ込められていた相手がぐちゃり、と潰れるのを帽子越しに感じて まりさは箱の向うの彼女を見て感謝の限りを込めていった 「ありがとうおねえさん!ゆっくりしていってね!!」 彼女はそう言い放つまりさを見つめて、背を向けてまたどこかへと去っていった。 それから一月ほどが経った。 その間まりさは毎日戦い、苦境に陥っても彼女の助言を頼りに勝ち続けた。 彼女の言葉を信じて戦うまりさは迷いが無く、実力を遥かに上回る力を発揮し続けた。 体の傷も増えて、その姿はまるで歴戦の勇士のようだった。 そしてまりさの彼女への想いも高まっていき、それはもはや信仰に近いものがあった。 あれからも彼女とまりさがまともに言葉を交わすことは無いが それでも戦いの間の彼女の声援と、去っていく彼女にかける「ゆっくりしていってね!」 を通してまりさは彼女と自分の心は通じ合っていると信じられた。 まりさはそのことが確かだと感じるだけでとてもゆっくりした。 まりさは彼女の存在があるおかげでこの生活が始まる以前の ただ箱の中にある餌を食べていただけのまるで生ける屍のような生活とはまるで違う 確かな彼女とのゆっくりを感じながら今を生きていた。 そんな幸せな日が変わることなく続いていったある日。 まりさの箱に緑色の例の相手が現れた。 「ゆふん」 まりさはそれを見て鼻で笑った。 ソレは最初に戦い、それからもう何度も打ち倒してきた相手と同じ種類のものだった。 多少、今までより体が大きいがなんら問題ない。 まりさは一刻も早くこの敵を打ち倒し彼女に「ゆっくりしていってね!」と言いたかった。 最初はまず睨み合い、緑のソレのギョロリとした目玉はもはやまりさに恐怖を感じさせるものではなくなっていた。 まりさはじりじりと必殺の跳び踏み潰しの間合いに緑のソレを入れようとにじり寄る。 緑のソレは野生の勘で危険を感じたのかそうはいくまいと後ずさるが、やがて箱の隅に追い詰められた。 「ゆっくり…しねぇ!」 まりさは緑のソレを完全に追い詰めると必勝を期して跳び踏み潰しを繰り出した。 勝利を確信してニヤリと笑った時、ブウンと激しい羽音が聞こえ、まりさの足元を涼やかな風が通り過ぎた。 「ゆ!?ゆっく…!」 ジャンプした隙に足元を通って後ろに廻られたまりさは慌てて後ろを振り向こうとした。 そと同じか否や、緑のソレがまりさの帽子に突っ込んだ。 「!?ゆっくらしてい」 緑のソレの体当たりで落ちた帽子がまりさの顔面に引っかかって視界をさえぎり、目の前が真っ暗になった。 必死に光を探して、帽子の中に差し込む小さな光に目をやっている最中まりさはギョロリと光るあの目と目が合った。 もはやまりさに恐怖を感じさせないはずの目は暗闇で薄く光り、それに見つめられてまりさは悲鳴を上げた。 度重なる戦いでまりさの帽子はところどころ穴だらけになり 緑のソレはその穴から体を入れて暗闇で唯一動いているのが見えたまりさの左目に喰らい付いた。 「ゆっびゃあああああああああああああああ!?!?!?」 まぶたは鎌に引っ掛けられて用を成さなくなり直接目玉にキバを立てられて穴が開いたまりさの目玉から中を満たしていた餡汁がどろりと垂れた。 「ゆひいい!ゆっぴいいいいいいいいい!!」 まりさは頭をぶんぶんと横に振り帽子を振り払った。 緑のソレも深追いをせずに鎌をはずして距離を取った。 「ま゛ぢざの゛お゛べべ…お゛べべがああ!!!」 まりさは左目からぬるりと流れ出る餡汁が頬を伝う悪寒に身をよじった。 目玉の中の体液と涙が交じり合って地面にこぼれた。 それを踏んだ感触でまりさはさらに混乱を酷くした。 それまでまりさの目に見えていた世界の半分に暗闇が満ちる。 勝利によりこれまで培ってきた自信は瞬く間に失われ、心の奥底からまりさは恐怖に支配された。 「ゆひっ…ゆひっ…」 まりさは狭くなった視界から緑のソレを逃すまいと必死に残った右目を動かすが 羽を持って飛びかうソレはまりさの視界から消えては現れ消えては現れた。 「ゆ…ゆっ…!」 まりさはすがるように天を仰いだ。 そこには彼女が固唾を呑んで見守っていた。 「ゆふぅー…ゆふぅー…」 彼女と緑のソレを交互に見ながらまりさは呼吸を落ち着けていった。 助言も、声援もなかった。 だがまりさにはわかった、彼女の期待が。 物言わぬその姿から確かに強い強い彼女の想いを感じ取ったのだ。 まりさはゆっくりと相手を見つめ、精神を集中した。 膠着状態の中じっと緑のソレと見詰め合った。 また恐怖は感じなくなっていた。 十秒か、一分か、五分か 二匹にとってとても長くて短い時間が流れ、ついに膠着が解かれた。 先に動いたのは緑のソレだった。 まりさはその飛ぶ勢い、方向を見て勝利を確信した。 「ゆっ!」 それを着地地点をそこから予測してそれ以上の高さでまりさは緑のソレの着地地点と思しき場所にとんだ。 箱の中のこの狭さでは一度跳んでしまえば殆ど方向転換する余地は無い。 落ちる速度を考えればもう一度ジャンプするより早くまりさの体が緑のソレを押しつぶすのは必定。 相手の後の先を突くまりさの完璧な勝利への作戦がそこにあった。 「ゆっくりつぶれてね!」 勝利を確信して飛んだ先にあったのは漆黒の三角形。 「ゆ!?」 さっき落としたまりさの帽子がその先にあった。 緑のソレはその頂点に足をつけると間髪居れずに方向転換して別の場所へと滑空していった。 足場さえあれば方向転換は容易である。 体の軽い緑のソレにとって帽子のとんがりは足場にするのに充分な強度を持っていた。 その時点で踏み潰すには若干まりさは高く跳びすぎていた。 まりさは再び自分の宝物である帽子に裏切られて泣きそうに顔を歪めながら呻いた。 「そ、そんな」 そして緑のソレを超える高さで限界まで飛び上がったまりさが着地した先にあったもの、それは 「ゆびゅぇええええええ!?」 着地の衝撃に耐え切れず傷つけられ抑えるものの無くなった眼窩から噴出す餡子と目玉だった。 「ゆぎいいいいいいいい!!!」 痛みと勝利の確信を打ち砕かれたことで狂いそうになりながらまりさは目を押さえようとした。 しかしまぶたはもはや用を成さないほどボロボロで余計に痛み、狂ったように身をよじるだけである。 「ゆっ?!どこにいったの!?」 痛みに狂いながらもはっとまりさは緑のソレが完全に視界から消えたことに気がついた。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?」 必死に相手を視界に捕捉しようとまりは辺りを見回した。 特に失った左の視界を補うよう右目を必死に左へ、左へと向けながら。 だから、右から襲い掛かる緑の鎌にギリギリまで気がつくことは無かった。 「……ぁ」 ぎょろりとした瞳、逆三角形の緑の頭 それがまりさがこの世で見た最後のものになった。 「や゛びゅぉお゛おお゛お゛お゛お゛おお゛お゛おおおお゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ!?」 痛みと悪寒と恐怖と暗闇に襲われてまりさは喉がはちきれそうになるほど悲鳴をあげた。 「や、べえ!ゆっぐ!ゆっぐぢぢでぇ!」 まりさの命乞いなど意にも介さずに、緑のソレは黙々とまりさの命を奪う作業を継続した。 まりさがいくら抵抗しようとも視界を完全に奪われたまりさに勝ち目はなかった。 次々と食い千切られ中の餡子を垂れ流す皮、引きちぎられ咀嚼される髪、頭を突っ込まれて中身を舐められていく眼窩 まりさを狂い死にそうになるくらい痛めつけるには充分すぎる蹂躙行為であった。 「ぁ…ぁ…ァ…ゅ…ゅっく…ぃ…」 そんな痛みと恐怖に苛まれた暗闇の中で、死を恐怖しながらもどこかまりさは晴れやかであった。 最初に緑のソレに殺されかけた時とはまったく別の感情がまりさの中に芽生えていた。 「ぉね…ぇさ…」 まりさは暗闇の中で彼女のことを想っていた。 自分をゆっくりさせてくれた彼女のことを。 彼女と出会えて、ゆっくりできたことを考えれば思っていたよりもずっと悔いは無かった。 彼女の期待に応えられなかったことだけが残念だったが、それでも自分は全力を尽くした。 そのことにまりさは悔いは無かった。 まりさをゆっくりさせてくれた彼女の期待を受けて戦えた一生にまりさは満足していた。 「やった…やった…!やったぁ!やったよ!あはは!やった!」 『ゆ…?や…った…?』 その時、暗闇の中のまりさに確かに彼女の声が聞こえてきた。 まりさはその言葉の意味を理解するのに長い時間を要した。 彼女が発する言葉はきっとまりさが負けたことによる悲しみか、失望か、怒りか そのいずれかの言葉を発するものだと信じきっていたからだ。 だから何故彼女がやった、と歓声をあげるのかまりさにはわからなかった。 「遂にやったよ!勝った!一対一でゆっくりに蟷螂が勝ったんだ!」 喜び勇むその声を聞くまりさにそっと彼女と思しき手が触れた。 そして彼女は蟷螂と呼ばれた緑のソレをそっとまりさから引き離した。 『ゆ・・・?あ、ありがとうおねえさん!ゆっくりしていってね!』 まりさはそれまでの彼女の言葉はひとまず忘れて助けてもらえたことを喋る余力が無いので心の中で感謝した。 「この美しさの欠片も無い憎たらしい饅頭頭に私の可愛い蟲達が負けてなんど苦渋を舐めたことかわからない」 『!? どおぢでぞんなごどいうのおおおおおお!?ま゛り゛ざはがわいいよおおおおお! ぞれにま゛り゛ざはお゛ね゛えざんのだめ゛にがんばっだん゛だよ゛お゛おおおお!?』 まりさは暗闇の中で突然自分を罵倒する彼女の言葉を、信じられないと悲鳴を上げた。 「でもそんな苦労も遂に報われるのよ あなたの子孫がどんどん増えて、この幻想郷を覆えばゆっくりより強い蟷螂が幻想郷の蟷螂になる! そんな蟲たちがもっと増えればゆっくりに怯えて暮らす必要も この幻想郷で、生態系の中で下に付くことも無い! 私の可愛い蟲達こそがゆっくりの捕食者となるのよ!」 しかし彼女の言葉はただひたすらにまりさを倒した蟷螂に対して向けられた。 『なにを…なにをいってるの…!?』 まりさには彼女が何故そんな恐ろしいことを言っているのかわからなかった。 彼女はまりさの勝利を願ってあの恐ろしい者達と戦わせ、応援していたはずなのだ。 なのに何故相手の勝利を喜び、笑い声を上げているのかわからなかった。 「ここでゆっくりを相手にした淘汰と 生き残った蟲同士での交配を繰り返して 私の可愛い蟲達はどんどん強くなってきてる この調子で行けばそのうち他の蟲達の中にもゆっくりより強い蟲が現れてくる! そしてその子達が繁殖すれば ぽっと出の新参の癖に幻想郷の中で私達より大きな顔してる あのゆっくり達より強くなれる!」 「そりゃあ世の中弱肉強食なんだから、私達蟲が弱いならゆっくりに食べられても仕方ない だったらゆっくりより強くなってやる! そう思って、みんなとここまで頑張ってきたのが遂に報われる!」 彼女が力強く放った言葉がまりさの耳に木霊する。 「ずっとこの日が来ると信じてたよ、私の可愛いあなた達 妖怪の私が手を出したら意味が無いから、一生懸命応援してたけどその甲斐があったわ!」 繰り返される蟲達への賛辞。 『あ…あ…』 ここまで話されればもうまりさにも理解できた。 彼女の気持ちは、一片たりともまりさになど向いていなかったのだ。 事情はよくわからない、だが少なくともまりさは彼女達がゆっくりに勝つための訓練道具でしかなかった。 戦いの最中で、彼女から降り注いでいると確かに感じたあの強い視線、声、想いは 全てまりさの相手の蟲達に注がれていた。 ならば、まりさの感じたゆっくりとはなんだったのか。 まりさは孤独に苛まれ続けてゆっくりできずに生きてきて 彼女と心を通わせることで初めてゆっくりできたと思った。 ならば本当は彼女と心が通じていなかったのなら まりさの想いがすべて独りよがりで、未だに孤独の中にいたのならば ゆっくりしたと思ってきたものは全て嘘のゆっくりだったのだ。 少なくともまりさはそう確信した。 例えそれまで感じたゆっくりが本当だったとしても 今ではそのゆっくりは嘘偽りとしかまりさにしか映らない。 まりさはゆっくりするということを誰からも学べなかったのだから。 彼女を中心に形作られていたまりさのアイデンティティは今この時崩壊した。 「今日は祝賀会ね、みんなを集めてあのゆっくりをたべるわよ!」 『や、やめてね…いや…いや…』 まりさの願いも空しく、何十、何百という羽音がまりさの耳に飛び込んだ。 『やべでええええええええ!』 ギチギチという音で蟲達が顎を蠢かせて獲物を見て舌なめずりをしているのがわかった。 『いやいやいやいやいやいやいやいやいやあああああああああああああああ! ま゛り゛さ゛は゛まだいちどもゆ゛っぐぢぢでな゛いの゛お゛お゛おおお!! ゆ゛っぐりぢないでぢぬ゛の゛なん゛て゛い゛や゛ああああああああああああああ!!! や゛べぅ゛う゛ぁ゛あ゛あ゛あ!!ごないで!ごないでむ゛じざんだぢ!!ごないでえええ!! お゛ね゛えざん!お゛ね゛えざんだずげで!いっじょにゆっぎりぢでええええええ! ゆ゛っぐりぃ!ゆ゛っぐりぃ!!どぼぢでま゛り゛ざはゆ゛っぐりでぎないのおおおお!? ほ゛ん゛と゛のゆ゛っぐりっでな゛んだの!?ゆ゛っぐり!ゆ゛っぐりじでいっでね! ゆ゛っぐりじでいっでね!?ゆ゛っぐりっでな゛に゛!?ゆ゛っぐりっでどん゛な゛ごどなの?! だれ゛でぼい゛いがらま゛り゛ざにゆっぐり゛を゛おぢえでよ!ゆ゛っぐり゛!ゆ゛っぐり゛ぃ! ゆ゛っく゛り゛ち゛た゛い゛!ゆ゛っく゛り゛ち゛た゛い゛ゆ゛っぐりぃ!ゆ゛っぐり゛ぃぃい゛!?』 まりさの心に瞬く間に後悔の念があふれ出した。 あと少しで触れられると思った、触れられたと信じたゆっくりを全て否定され ゆっくりを求めるまりさの想いはぐちゃぐちゃになって暴走し、生きてゆっくりしたいという強い渇望となった。 だがもはや喋ることのできないまりさの想いが誰かに届くことは無い。 無常にもまりさの体に蟲達が一斉に群がった。 『ま゛り゛さ゛も゛ゆ゛っ く゛り゛し゛て゛み゛た゛か゛っ た゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』 ――――――……・・・ ある時から、ゆっくりの間でこんな噂が広まった。 『魔法の森の奥深くに おいしい花が美しく咲き乱れ 太陽は燦燦と降り注ぎ 小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 緑に溢れ夜もやさしい空気が安らかな眠りに誘う そこには争う者はおらず誰であろうともゆっくりできる そんなゆっくりプレイスがあるという その場所の名は 何度夜が来てもずっとゆっくりしていられる という意味を込めて 永夜緩居(えいやゆるい) と呼ばれていた』 この物語は永夜緩居を目指したゆっくりと蟲達の物語である。 永夜緩居― 第四話[ゆっくり]
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1481.html
2008年9月27日 作者により一部修正 前 一方、村役場の会議室。 「何てことをしてくれたんだ!!条約違反が知れたら、ゆっくりごときに食料を奪われるんだぞ!?」 「す、すまない…俺は条約なんて知らなかったんだよ!!」 何気なく子ゆっくりを食した事が、こんな一大事に発展するなんて。 男は周りの村人から責め立てられて、自分が仕出かした事を初めて理解した。 「今、この村の食料事情は決して余裕があるわけじゃない。もしあいつらに群れを補う分の食料を与えるとなったら…!!」 「はっきり言う。村が滅びるぞ!!」 この男を除いて、村人は皆条約の内容を十分理解していた。その条約を結びにきたドスまりさの恐ろしさも知っていた。 そして、条約違反があった場合に違反金―――食料をゆっくりの群れに支払う必要があることも。 「うっぐ……畜生!!どうしてこんなことに!!」 「お待たせした。状況を詳しく教えてくれ」 ちょうどその時、会議室に村長が入ってきた。4人の側近も引き連れている。 「村長!聞いてください!!こいつが群れの子ゆっくりを食っちまったんですよ!!」 「もう条約違反は向こうにも知れているはずだ!!きっと今日中に食料を取りに来る!!」 「どれもこれも、こいつが掲示板を確認しないで適当なことをやったからだ!!」 我慢の限界を超えたのか、男に殴りかかろうとする村人。 しかし、それを遮ったのは……他でもない村長だった。 「なっ…どうして止めるんですか!?こいつは取り返しのつかないことを!!」 「まず、皆に知らせておきたい事がある。実は……昨日掲示された条文は、まったくもって不完全だった。 この場を借りて、皆にお詫び申し上げたい」 深々と頭を下げる村長。その突然の行動に、まわりの村人は何も言えなかった。 「そ、それはともかく…食料はどうするんですか!?あいつらに持っていかれたら俺達は…!!」 「いいのだ」 頭を上げた村長は、コホンと咳払いすると話を続けた。 「何を…何を言ってるんですか?」 「だから、それでいいのだ、と言っている」 揺ぎ無い自信が、村長の目にこもっていた。一方、男を責め立てていた村人達は訳が分からぬという表情だ。 「それとも何か?君たちはゆっくりごとき下等生物との条約を律儀に守って、ご丁寧に食料をくれてやろうとでもいうのかね?」 「そ、それは…俺達だって嫌ですよ!!でも条約が――― 「そんなにドスまりさが怖いかね?君には……人間としてのプライドはないのかね?」 村人全員に言い聞かせるように、そして…まるでこの村以外の全ての人里に向けて問うように…村長は言い放った。 「だが、どうか安心して欲しい。“条約”は我々に味方する」 「どういうことですか?条約は……俺達が認識しているのとは、内容が違うんですか?」 「まさにその通り。『ゆっくりを殺してはならない』なんて条文は……どこにも一切記載されていないのだ!! 偽りの条文が掲示されてしまった不手際については、先ほども言ったとおり。重ねて謝罪する」 その言葉が、村人を安心させた。ゆっくりを殺しても問題なかったのだ。 しかし、それだけでは説明がつかないことがある。ゆっくりはその偽りの条文を条約だと認識している、という点だ。 それについても、村長は最適な解決策を提示する。“人間”にとって、最適な解決策だ。 「だが…残念なことにゆっくりどもは勘違いしている。人間が条約違反を犯したと思い込み、食料を奪いにくるだろう。 さあ皆の者!!大切なお客様が、大挙して押し寄せてくるぞ!!準備をしろ!!槍を持て!!さぁ早く!!早く!! ただし手は出すな!!大切なお客様だ!!大切なお客様には、自らの過ちを存分に理解していただき、その上でお引取りいただく!!」 「「「お……おおおおおおっぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」 村人は歓喜した。条約なんてくそ食らえ!!ゆっくりは搾取されるだけの存在!!そんなゆっくりが人間と平等な条約を結ぶなど、笑止千万!! 我先にと会議室を飛び出し、武器を手にとって村と森の境界線へと向かう村人達。 それを、村長率いる5人の男はゆっくりと追う。 「やはり、ドスまりさにも“条約違反”は伝わっているのでしょうか?」 「そうだろうな。子ゆっくり一匹を食ったのなら、残りの家族はそれをドスまりさに伝えに戻るはずだ。 まったく……あまりに予定通り事が進むと、逆に恐ろしくなるぞ」 村長は苦笑しながらも、自信は失っていなかった。 そして30分後、人間とゆっくりは村と森の境界で再び対峙する事になる。 『ぷくぅ~!!』 村と森の境界。 槍をもって横一列に並ぶ人間を前に、ドスまりさは大きく膨らんで威嚇のポーズをとる。 後方に控えている数千のゆっくりも同様のポーズをとった。 村人の中には怯むものもいたが、今のところ最高にテンションがあがっている彼らにとって、そのポーズは笑いを誘うものでしかなかった。 『ゆっ!!まりさはとてもおこってるよ!!はやく村長さんをよんできてね!!』 「私をお呼びかな?」 『ゆゆっ!?』 あまりにも早い村長の登場に、ドスまりさは戸惑いを隠せなかった。 だが、やることは変わらない。人間達の非をネタにして食料を掻っ攫おうという作戦は、変更する必要はないのだ。 村長は煙草を口に咥えたまま、村人達より一歩前に出る。 そのままどんどん歩んでいって、一匹の赤ちゃんゆっくりの前で立ち止まった。 「ゆっ!!おじさんはゆっくりあっちにいってね!!どすまりさのはなしのとちゅうだよ!!」 「ゆっくちぃ~?おじしゃんもゆっきゅりしゅる!?」 親ゆっくりは危機感を露わにしたが、当の赤ちゃんゆっくりはまったくの無防備である。 「ほぅ……人間でもゆっくりでも、赤ん坊はやはり愛らしいものだな」 「ゆっ!!そうだよ!!れいむのあかちゃんはとてもゆっくりしたかわいいこだよ!!」 「ゆっくちぃ~?れいみゅはかわいいよぉ!!」 「……はぁ。やはりゆっくりは理解しがたい生き物だな」 あっさり警戒を解くゆっくりに対して、村長はすっかり呆れてしまった。 ぴょんぴょん跳ねて足元にすり寄ってくる赤ちゃんゆっくり。村長は、そんな赤ん坊に煙草の火を押し付けた。 ジュウ!! 「ゆっ?ゆっぎゃいあおああおあいおりあおえろいあおえりおあおいろ!!???」 「あがぢゃあああああああん!!!どぼぢでぞんなごどずるのおおおおおおぉ!!!?」 「じょうやくいはんだよ!!ゆっくりたべものをだしてね!!さもないとゆっくりできなくするよ!!」 「にんげんのぶんざいでそんなことするなんて!!どすのこわさをおもいしってね!!」 騒ぎ立てるゆっくりには目もくれず、ドスまりさの目の前に仁王立ちする村長。 ドスまりさは、怒りのこもった目つきで村長を見下ろした。 『残念だよ!!でも条約できめたことだよ!!だから村長さんは早く――― 「実に残念だ。まさか条約締結から1日も経たずに、そちらが違反をしてしまうとは……」 『ゆ!?何を言ってるの!?条約違反をしたのはそっちでしょ!?ゆっくり食べ物をもってきてね!!』 ドスまりさは、村長が何を言っているのか理解できなかった。 こちらが違反した?何を言ってるんだ!人間が子ゆっくりを食べたのに、どうしてこっちが違反したことになるんだ!! 憤りを隠せないドスまりさは、怒りに顔を歪めた。仲間を殺した人間が許せないのだ。 「では、その条約とやらを確認しようか。君、あれを出してくれ」 指示を受けた男が、大きな紙を取り出した。それは昨日締結された条約の条文である。 左側にはゆっくりが理解できるようひらがなで。右側には人間が理解できるよう漢字も交えて、条文が記述されている。 そして、村長はその右側に……内容をひらがなで書き直した条文を、ぺたりと貼り付けた。 「これが、君の読めない漢字をすべてひらがなにしたものだ。さぁ、これで理解できるだろう? 君たちの過ち。君の過ち。自分が何をしでかし、何を敵に回したのか。存分に理解できるだろう? 理解できないか?それでは読んでやろう。一字一句漏らさず、君が締結した“条約”とやらをここに公開しようではないか!!」 以下が、右側に書かれていた条文の一部である。 左側に記述されている条文は、なんら効力を持たない。 人間はゆっくりの群れに自由に立ち入る事が出来る。 ゆっくりは人間の許可なく村に立ち入ってはいけない。 人間の生活・生命を脅かしたゆっくりは、人間が裁く。 ゆっくりの生活・生命を脅かした人間は、なんら罪に問われない。 ゆっくりの生命・生活を脅かしたゆっくりは、人間が裁く。 ゆっくりは、労働力として100匹のゆっくりを村に送らなければならない。 ゆっくりの群れは、各々の家族が毎日子作りをして子供を産まなければならない。 群れ全体で1日に1000匹以上の子供を産まなければならない。 生まれた子供は、その9割を人間に提供しなければならない。 群れのゆっくりの数の増減を把握するため、随時必要な人数の人間がゆっくりの群れに滞在する。 その人間に何らかの危害を加えた場合、群れ全員は人間に殺される。 これ以外にも、数多の条文が記載されていた。全てひらがなと漢字を交えて。 そして、その内容を……ドスまりさは今、把握した。 「どれもこれも、殆ど守られていないではないか!!貴様ッ、条約を舐めているのか!!」 村長は激怒していた。条約は、守るべきものである。 条約とは、国家と国家、集団と集団の約束事。それを破られては困るのだ。 『ゆっ!!でもそんなのまりさは知らないよ!!まりさはその条文をよまなかったよ!!』 「そうだろうな。だが書いてあったんだ。すべて!!余すことなく!!一字一句漏らさず!! 君は条文全てに目を通す権利があり、義務があった。内容を理解する義務があった。理解できなければ申し出る義務があった! そしてそれに署名をしたということは、その権利と義務を果たしたという宣言なのだ。故に条約は成立する。 なのに貴様は、今更条約を反故にしろと言う……君は、約束を破ろうとしているのだよ?」 『ゆっ、ゆぐぐぐぐ!!!どぼぢでえ゛ええ゛え゛えええ゛え゛え゛ぇぇえ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ゛ぇえ゛!!??』 条文全ての内容を理解したドスまりさは、その苛烈な内容に絶望した。その叫びが地を震わし、他のゆっくりにも伝わる。 一字一句漏らさず読み聞かされた他のゆっくりも、その中身がどんなに酷いものかを知って恐怖した。 「ひどいよ!!そんなゆっくりできないようにするなんて!!」 「にんげんだけゆっくりするなんてずるい!!まりさたちもゆっくりさせてね!!」 「あかちゃんをあげるなんてできないよおおおおおおおぉぉおぉぉ!!!」 「どうじでぞんなごどずるのお゛おおお゛お゛おお゛お゛!!??」 だが、ドスまりさは思い出したように反論した。村長は意外そうな顔をしてそれに応じる。 『ゆぐぐぐ!!でもまりさは言ったよ!!“右側の文章がわからない”っていったよ!!』 「あぁ、よぉく覚えているよ。で、私は言ったな。“人間にわかるように書いてある”と」 『そうだよ!!だから村長さんがだましたんだよ!!条約はむこうだよ!!』 「騙した?誤解しないでくれたまえ。あの時私が言った言葉を繰り返そう」 ―――人間はひらがなだけだと逆に文章を理解できないんだ。だから右側には人間が理解できる文章で書いてある。 条約締結のためには不可欠な措置だ。ゆっくり理解してくれたまえ。 「なぁ、私はいつ……右と左の文章の内容が同じだと言ったのだ?」 『ゆっ!?そ、それは!!』 「君は“右側の文章が分からない”と言った。それでは我々も“はい、そうですか”としか答えようがない。 もし“右側の内容を読み上げろ”と君が要求すれば、我々はそれに応えたというのに…… 君は本当に条約を理解しようとしたのか?君にとって、この条約はお遊びだったのかね?」 『ゆっ!!ゆうぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!そんなああぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!』 条約を無効に持ち込むための一撃も、あっさりと村長にかわされた。 もはや、ドスまりさに打つ手はなかった。 「なぁ、ドスまりさ?君は……我々と対等なつもりでいたのかな?」 『ゆっぐ…ゆっぐぐ!!』 「ところが違うんだ。我々は強者。君たちは弱者。強者が弱者と条約を結んだところで、何のメリットもない。 そんな利点ゼロの条約を、我々が結ぶと思っていたかね?思ってたんだろうな、きっと。君はバカだから」 『ッがああぁぁぁあっぁあぁあぁぁぁぁ!!!』 言葉のナイフで、ドスまりさの心を抉る村長。 ドスまりさは悲鳴を上げるが、暴れまわることはしない。 心の隅で認めているのだ。自分達の過ちを……自分達の落ち度を。 「いいか?後学のためによく聞きたまえ。条約というのは、強者と強者、弱者と弱者の間にのみ成立する。 ということは、我々と君たちとの間にあったのは条約ではない別のもの、ということになる。それが何かわかるか?」 『ゆっぎぎぎぎぎ!!!わがらないっ!!わがらないよっ!!』 「……搾取だよ。強者による、弱者からの一方的な搾取だ。我々は最初からそのつもりだった。 弱者から“条約を結ぼう”という提案があったので、我々は嬉々として受け入れたよ。鴨が葱を背負ってやってきたようなものだからな。 繰り返す。我々と君たちとの間に結ばれたのは、“条約ではない”。文書によって、我々による君らからの搾取が正当化されたに過ぎないのだよ」 「ひどい!!どうしてれいむたちをゆっくりさせてくれないの!!」 「そうだよ!!まりさたちもゆっくりしたいよ!!」 「そんなじょうやくだめだよ!!どすまりさ!!じょうやくなんていらないよ!!にんげんたちをこらしめようよ!!」 「そうだそうだ!!じょうやくなんてむこうだよ!!どすまりさがいれば、にんげんなんてかんたんにころせるよ!!」 『そんなごどいっだらだめえ゛え゛え゛え゛ええ゛ぇぇぇ゛ぇ゛ぇえ゛え゛!!!』 ドスまりさは恐れていた。ここはひとまず条約を受け入れて、引き下がらなければ! さもないと、周りのゆっくりが余計なことを言って付け入る隙を与えることになる。 その考えに至ったまではよかった。だが、残念なことに手遅れだった。 「ほぅ、君たちは我々に攻撃する意思があるのか。後方の5千を越えるゆっくりは、皆我々の生命を脅かすための兵士ということか」 『ちがいまずううううぅぅううぅぅぅ!!!までぃざだじはだべぼのをもらいに――― 「いや、それはない。何故なら条約違反をしたのは君たちなのだ。そんな君たちが食料を受け取りにくるとは考え難い。だろう?」 暴論だった。姑息な手段で集団をおびき寄せておいて、それを“生命を脅かす兵士”だと言い出すなんて! だが、反論する力も権利もドスまりさにはなかった。こんな滅茶苦茶な条約を結んだのは、他でもない自分なのだから。 「我々は、君の後方に控える5千のゆっくりを、“人間の生命を脅かしうる存在”と認識する。これは重大な条約違反だ。 よって条約に基づき、違反金の支払い、そしてこの場にいる全てのゆっくりを我々人間が裁くものとする!!」 『どうじで……まりざだぢはゆっぐりじだいだけなのに……!!』 「反抗したければすればいい。結果は変わらぬ。この場にいるゆっくりが全滅するだけだ。 ……そうだ、君は条約締結時に我々をドススパークで脅したな。あれも条約違反ということにしよう……やれ!」 極悪非道。人間対人間であれば、そんな言葉が当てはまるだろう。 しかし、相手はゆっくり。そんな非道がまかり通るのが、この世界だ。 村長の指示に従い、槍を持った人間がゆっくりたちの周囲を取り囲んでいく。 「ゆっくりしね!!ゆっくりできないにんげんはしね!!」 「にんげんのくせに!!ゆっくりのじゃましないでね!!」 果敢にも人間に飛び掛っていくゆっくりだが、あっさりと槍につき抜かれて息絶えていく。 その惨状はいつまで続くのか。ドスまりさは分かっていた。自分が、条約違反を認めればいい。 自分が謝れば、この場のゆっくりが全滅することは避けられるのだ。 『もうやべで!!わがりまぢだ!!まりざだちがわるがっだでず!!ごべんなざいいいいぃぃ!!!』 ドスまりさは、正式に謝罪した。その瞬間、人間によるゆっくりへの攻撃が止む。 自分一匹ならドススパークで逃れられたかもしれない。しかし、後方には5千のゆっくりがいるのだ。 ドススパークで2,3人の人間を殺したところで、残った人間は他のゆっくりを綺麗に殺しつくしてしまうだろう。 「どうじで!!どうじであやまるの!!まりさたちはわるくないよ!!」 「れいむもわるくないよ!!ゆっくりぢでだだげなのにいいいぃぃいぃぃ!!」 「どずのばがああぁあぁぁぁぁぁ!!どうじでにんげんをごろざないのおおおおおおおぉぉぉおぉぉ!!??」 後ろのゆっくりたちは、ドスまりさがどうして人間に対抗しないのか、ドススパークを打たないのか、などと文句を言ってくる。 ドスまりさは苦しかった。人間には不当な条約を押し付けられ、仲間からは罵られる。 全ては仲間のために。仲間がゆっくりするために頑張ってきたことなのに。その仲間は無能で、理解力不足。 ドスまりさは、全てを諦めた。全てを後悔した。人間を欺いたりせず、自分達だけでゆっくりすればよかった、と。 報われないリーダーは……敵を欺こうとして逆に欺かれた無能なリーダーは、すべてを新たな支配者に委ねた。 半年後。 「ゆぅ……」 「ゆっくりしたいよぅ…」 森を往来するゆっくりたちの表情に、かつての元気はない。 一方的な搾取。一方的な蹂躙。果てに待つのは破滅。その行く末が、見えているからだ。 「ん……んほおおぉぉ……!!」 「ずっぎりー!!ゆぅ………れいむのあかちゃん、みじかいあいだだけどいっしょにゆっくりしようね」 頭に生えた蔓。子供の形を成している実に向かって、れいむは子供が連れ去られるまで共にゆっくりしようと決めた。 毎日子作りを強制され、10匹以上の子供を作る事が条約で取り決められている。 生まれた子供を逃がそうとしても、駐在する人間に発見されて一家根絶やしになる可能性もある。 だから、ゆっくりの家族は今日も子作りに励むのだ。 「おらおらァ!!きりきり働けぇ!!」 「いぎゃああぁぁぁぁあゆっぐりいいぃぃいいぃぃ!!!」 「いだいのいやあぁぁあぁぁ!!ゆっぐじじだいいいぃぃぃいっぃ!!」 工事現場で悲鳴を上げるのは、強制労働を課せられているゆっくりだ。鞭に打たれて、大粒の涙を流している。 この強制労働も条約に記載されている。人間に対して労働力を提供する事が、取り決められている。 だから、ゆっくりは今日もせっせと働くのだ。 「よし!!誰がたくさん殺せるか勝負だ!!」 「負けないぞ!!」「俺だって!!」 ゆっくりの群れが住む森で、ゆっくりを殺した数を競うという残酷な遊びを始める子供達。 そんな彼らを止める権利を、ゆっくりたちは有していない。 ただ殺されるままに、殺されなければならない。それが条約の取り決めである。 運がよければ、森に駐在する大人によって止められることはあるかもしれない。 だが、人間による群れのゆっくりの増減予想を逸脱しないかぎり、大人の人間による助けなど期待できなかった。 「どぼぢでごろずのお゛お゛おおお゛ぉぉぉぉぉ!!??」 「れいぶだぢはゆっぐじじでだだげなのにいい゛い゛い゛いいい゛い゛!!」 「どずまりざだじゅげでえ゛え゛ええぇぇ゛え゛え゛ぇえぇえぇぇ!!!」 「どぼぢえむじじゅるのおお゛おお゛お゛お゛お゛おぉぉぉぉ!!??」 「どずのばがあ゛あ゛ああ゛あ゛ぁぁぁ゛ぁ゛あ゛ああ゛ぁぁぁあ!!!」 子供を産まなかった親ゆっくりは殺された。 働かなかったゆっくりは殺された。 人間の子供の遊び相手になったゆっくりは、笑いながら殺された。 群れのゆっくりが増えすぎたときは、たくさん殺された。 人間が必要だと判断したときは、とにかく殺された。 すべては条約があるから。条約の取り決めに従って、人とゆっくりは“共存”している。 だが、群れのゆっくりには希望があった。 最後の条文には、こう記されている。 この条約の有効期間は、一年間である。 ゆっくりたちは、その一年後が訪れるその日まで、人間の酷い仕打ちに耐え続ける。 一年経てば自分達は解放される!!自由になれる!!―――そう信じて。 『ゆっぐぐぐぐ………みんな……あと半年……がんばっでね………』 大木に縛り付けられているのは、ドスまりさである。 条約の取り決めに従い、人間の生命を脅かしたドスまりさは人間に“裁かれている”のだ。 身動きの取れないドスまりさは、一日一食、駐在している人間から食料を与えられている。 目の前を往来するゆっくりが、ドスまりさの顔を見上げる。 皆口には出さないが、心の中はドスまりさを罵りたい気持ちでいっぱいだった。 だが、そんなことをする体力的余裕がないのだ。そんな力が余っていれば、一匹でも多く子を産んで人間に献上しなければならない。 『がんばっで……ゆっぐ……うっぐ…ううぅぅぅぅ……がんばっでねぇ……』 ドスまりさの記憶が正しければ、約束の期日まであと半年。 その日が来れば、自分達は解放される。そしたら復讐なんて考えず、この森から逃げよう。ここは全然ゆっくりできない。 今まではゆっくりさせてあげられなかったけど、解放されたらここから遠い別の場所でゆっくりしよう!! みんなでゆっくりすれば、自分も幸せになれる。自分を罵ったゆっくりも、きっと許してくれるはずだ。 群れのゆっくりにとって、その“半年後”こそが生きる希望だった。 半年後の自分がゆっくりする姿を思い浮かべて… 今日も子を作り、働き、搾取される。 だが、とても残念なことに。 人間側としては、半年後までゆっくりを生かしておく予定はまったくなかった。 (終) あとがき ゆっくりレイパー氏の『ある愚者の孤独な復讐』を読んで、結構溜まったんですよ。すっきりできなかった。 この糞ったれ村長はカリスマ村長の外交手腕を見習ってね!!という具合に書きなぐりました。5時間で。 次はちゃんとした虐待を書くから許してね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4907.html
※前作 ゆっくりが実る木 の続きです ※前作を読まなかった人でもわかるよう前回のあらすじっぽいのが置いてあります ※お兄さんが悪夢にうなされます ※変態ネタがあります。 ※何度も似たような夢を見ます ※パロディがあります 「ゆっくりから生えるゆっくりが実る木 夢編」 男は長い夢を見ていた。 それはゆっくりが実る木の種をもらい。 軽い気持ちで育てたら成長が異常なほどに早く、実としてゆっくりがはえてきた。 そしてたくさんゆっくりが集まったところで友達に売り飛ばす自分の姿も確認できた。 しかし木の実を見ているとゆゆこやらんなどの希少種も生えてきたが きめぇ丸が生まれると同時に木が朽ちるというものだった。 その夢を見てから同じような夢しか見なくなった。 「ハッ・・・また同じ夢を見るようになっちまった。」 『また』だ。 あの日以来。(あの日は夢オチだったけど) ゆっくり関連の夢しか見てない。 「あの木以外の夢なんて見れるか? ゆっくり関連の夢しか見てないんだ。 いけると思う。」 やってみる価値は十分ある。 とりあえず目をつぶりあの木以外のことを思いながら眠りにつく。 あたりの景色が真っ白だ。 うまくいったか? そう思いあたりを見渡すと 何か変な物体を見つけた。 すると俺を見るなりその物体は 「くろまくー」 としゃべり俺に乗りかかった! (がばっ) 「あぎゃあああああああああああああああっ!! はー・・・はー」 やっぱりゆっくり関係だったがあの木以外の夢はどうやらBAD ENDな方向にで進んでいたようだ。 「あやうくれてぃに殺されるところだった・・・」 もう1時、早く寝ないと明日に響きそうなので眠ることにする。 寝てみるとまたあたり景色が真っ白になった。 またかよ。と思いあたりを見渡す。 俺はさぁ、れてぃでも何でもこい!そう思ったお兄さんが見たのは肌色のぷにぷにしたもの 上を見てみると 「こーぼーねー」と叫ぶ巨大ゆゆこがいた。 そしてゆゆこは口を大きく開け、吸い込みを始める! (がばっ) 「ふぎゃあああああああああああああああああ!!ま、またかよ!」 なんだかんだ言ってあの夢以外は最終的に俺が死ぬということはよくわかった。 「てか、ゆゆこに殺されるなら本望だけどね!」 と変態じみたような言葉を発するとまた眠りについた。 また景色が真っ白に(ry で目の前にいたのは発情したでかいありす。 「にんげんさんにもありすたちのあいをあげるわあ・・・」 とあごの下から出てきたのは・・・そう、ぺにぺにだ。 「しこってもいいのよぉぉぉ・・・」 といいぺにぺにをを少しずつ俺に近づけ・・・ 「すっきりしましょぉぉぉぉぉぉぉ・・・」 「アッー」 (がばっ) 「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!! 何だよこれ!次は変態ネタかよ!」 変態はこいつなのだがついにレイパーの夢まで見るようになってしまった。 まずゆっくりできない夢から開放されるために 何も考えずに寝てみよう!そう考えた俺は 「なぜこんな単純なことに気づかなかったんだ?」と思い眠りについた。 また景色が(ry 「・・・え?」 何でこうなるのおおおおおおおおと思う俺の目の前に現れたのは 超巨大なドス そしてドスは口からエネルギーをため、俺にドススパークを発射した! それをもろに受けた俺は跡形も無く消滅した。 「ふぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!! って・・・なにこれ・・・」 時計を見ると2時をさしていた。 「こ・・・これで一時間か!?」 おちつけ、これも夢かもしれない。 なら寝る以外、手段は無い 顔をひっぱたいて夢じゃないと判断すれば眠りにくくなる。 だから寝るしかない。明日に備え。 しかし、夢は容赦なく男を襲った。 あるときは巨大ちるのが現れ くしゃみをして俺を凍らし。 またあるときは巨大らんが現れ 米鉄砲を俺に向けて撃つということも またあるときは巨大れみりゃが現れ 俺の血を吸ってゆき。 またあるときは巨大ふらんが現れ 俺をひたすら殴りまくり。 またあるときは巨大なうどんげが現れ 俺をあざ笑う。 またあるときは巨大おりんが現れ その僕であるゆっくりゾンビが俺に襲い掛かる。 ぶっ倒れる俺。 そしてそこに浮かぶ文字が 「You Are ○○○○」 (がばっ) 「ってバイ○かよ! というより何突っ込んでんだ?俺 あ、そうだ。時計時計・・・」 拾い上げ時計を見ると7時をさしていた。 「ええええええ!?」 「あ、そうか今日日曜だったな・・・」 ほっと一息つきまた眠りにつこうとする。 すると枕に何か違和感を感じた。 「なにかぽこんとしてるな・・・」 と思い枕を持ち上げてみると・・・! 続く! あとがき ゆっくりが実る木の続きでした。 悪夢にうなされるお兄さん これってありじゃね!?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2052.html
木の根元に作られた巣の中で、ゆっくりの子供達が遊んでいる。 4匹居るれいむはゆーゆーと音程を無視した歌を歌い、 2匹居るまりさはそう広くない巣の中でぐるぐると追いかけっこをしている。 前を跳ねるまりさが息を上げて速度を落とすと、追いかけて来たまりさが後頭部にのしかかる。 逃げようとする動きと押さえつけようとする動きが、次第にすりすりへと変わって行き じきに満足したまりさ達は走り混んだ疲れからぽてっと座ると、空腹を訴え始めた。 「ゆぅ、おなかちゅいたよ!」 「ごはんたべちゃい!」 子供達はまだ赤ちゃんゆっくりより少し大きいくらいのサイズで、 体内に栄養を多く溜め込んで置くことが出来ない。 加減を知らず遊びたいだけ遊んだまりさ達の体力は、 既に放っておけば命にかかわる所まで消費されていた。 「ゆゆ…でもごはんがにゃいよ?」 「おかあしゃんがごはんをとってくりゅよ、がまんしちぇね」 「がみゃんできにゃいよ! ゆあ゛ぁぁぁぁん!」 体力を温存しようとせずに騒がしく泣き出すまりさに、つられてれいむ達の目にも涙がこみ上げてくる。 この巣には食料の備蓄が無く、小さい子供は外に生える草の存在を教えられていない上 危ないので巣から出ないよう親から強く言われている。 何の打開策も持たない子供達は、ただ泣くことしか出来ない。 子供達の泣き声の合唱が巣の外にも漏れて聞こえ始めると、程なくして1匹のゆっくりが飛び込んできた。 「ゆっ! ゆっくりかえってきたよ! ゆっくりなきやんでね!」 「ゆうっ! おかあしゃんおかえりなしゃい!」 「ゆあぁぁん! おにゃかしゅいたよ!」 「ゆっくりごはんたべさしぇてにぇ!」 「ゆ! ゆっくりたべてね!」 帰ってきたゆっくりを見るなり子供達は泣き止み、すぐにごはんの催促を始める。 催促を受けた母親、成体のゆっくりれいむが膨らんだ頬からゆべぇ、と食料を吐き出すと 子供達が群がり見る見るうちに平らげていく。 「がつがつ、むっちゃむっちゃ! がつがつ、むっちゃむっちゃ!」 「ゆっ! まりしゃばっかりじゅるいよ! れーみゅのぶんものこしちぇね!」 「「むっちゃむっちゃ、むっちゃむっちゃ!」」 走り回って体力を消費していたまりさ達は一心不乱にがつがつと食い漁り、 取り分がなくなっては困るとれいむ達も競うように掻き込む。 まりさ種と比べ狩りが得意ではなく、物を運ぶ手段も口に含むしかないれいむが持ち帰った食料は 6匹の子供に食べさせるにはまったく足りていなかった。 「ゆゆっ、もっとたべちゃいよ! ごはんちょいだいね!」 「おかーしゃんごはんちょうだい!」 「じぇんじぇんたりにゃいよ!」 「ゆっ、す、すぐとってくるからゆっくりまっててね!」 次々と不満を漏らす子供達に、親れいむはまた狩りに出かけて食料を取ってくると伝え 全然ゆっくりすること無く巣から飛び出して行く。 この家族は片親だった。数日前巣にやって来た人間が親まりさを連れ去ってしまい、 それまで親まりさが担当していた食料集めを親れいむがしなくてはいけなくなった。 その結果、親れいむが狩りに出ている間に子供達を見る者がいなくなると、 体力の温存を考えられない子供達は疲れきるまで遊び、 親が残していた備蓄を2日もせずに食い尽くしてしまう。 親れいむは巣と狩場を1日に何往復もし、夜が来たら泥のように眠る生活を続けていたのだった。 親れいむが再び狩りに出かけ、残された子供達が少しだけ回復した体力を また遊びで消耗しようとし始めた時、巣の入り口の偽装ががさがさと外され 人間がぬっと顔を覗かせた。 「ゆゆっ?」 「やあ、ゆっくりしていってね」 「「ゆっくりしていっちぇね!」」 子供達が本能からの挨拶を返すと、人間は入り口の前に ゆっくりの入った透明な箱を移動させ子供達に見せる。 「ゆゆっ! おとーしゃん!?」 「ゆっ! ゆっくりあいたかったよ!」 箱の中に入っていたのはこの家族の父親役であるゆっくりまりさだった。 この箱を持ってきたのは数日前に親まりさをさらって行った人間なのだが、 その時巣の奥に隠れていた子供達は人間の姿も見ておらず、声すらも覚えていない。 「それじゃあお父さんを中に入れるよ」 「あぶないからゆっくりはなれてね!」 「「ゆゆっ」」 人間が箱を巣の中に押し込み、まりさの顔が巣の外側を向くように回転させると、 箱を巣の中の壁に少し寄せて手を離した。箱に轢かれないよう離れていた子供達も、 箱が止まったと見るやわらわらと集まり親まりさとの再会に顔を輝かせる。 「ゆっ! おうちにかえしてくれてありがとう!」 「「ありがちょう!」」 「ああ、良かったな」 親まりさが人間にお礼を言うと、子供達も揃ってお礼を言ってくる。 ほほえましい光景に人間が満足げに微笑んでいると、 1匹の子れいむが箱に入ったままの親まりさに疑問の声を上げた。 「ゆ? にゃんでおとうしゃん、そこからでちぇこにゃいの?」 「ゆゆっ?」 「ゆ、まりしゃおとーしゃんとすりすりしちゃいよ!」 「だ、だめだよ、すりすりはしたいけど、はこからでたらゆっくりできないよ」 スキンシップを望む子まりさからの要求に、箱から出ることを即座に拒む親まりさ。 ゆっくりから見ても異常な姿に、子供達の間に動揺が広がる。 「ゆっ? …でもおとうしゃん、うごきにくそうだよ?」 「だいじょうぶだよ、このはこのなかはすごくゆっくりできるよ」 「ゆゆっ?」 親まりさの入っている箱は前後の幅と高さに若干の余裕があるが、 左右の幅が成体ゆっくりの幅よりも若干短い。 親まりさは左右の壁から挟まれて若干変形し、中での方向転換すら 出来なさそうであるが、それでもゆっくり出来ると言う。 ゆっくり出来ると言う言葉に、子供達は目をキラキラさせながら箱の回りを跳ねて 入り口を探すが、四方の壁に子ゆっくりが入れるような穴は無い。 親まりさの背面の壁に蝶番と取っ手があり、引けば開くようになっているが 子ゆっくりの高さでは取っ手を掴む事が出来ず、また使い方もわからないようだ。 「おとーしゃんばっかりじゅるいよ、まりしゃもゆっくりしたいよ!」 「れーみゅもゆっくちちたい! にゃかにいれてにぇ!」 「ゆゆっ、このはこのなかはまりさでいっぱいだよ!」 子供達が揃って、ぷくっと頬を膨らませた所で、 ずっと様子を眺めていた人間がここぞとばかりに声を掛ける。 「ゆっくり出来る箱に入りたいのかな? 箱ならいっぱいあるよ」 「ゆっ! はこしゃんちょうだいね」 「まりしゃもほしいよ!」 「よし、それじゃ入れてあげるから、ゆっくり並んでね」 「ゆっきゅりならぶよ!」 並ぶよ!と言いながら我先にと一気に跳ねてくる子供達をひょいひょいと摘み上げると、 天井の板が無い子ゆっくりサイズの箱に次々と入れて行く。 この箱は親まりさの物とは違い、背面に蝶番で開くドアが無いが 前後、左右共に若干の余裕がある広さで方向転換くらいなら可能である。 「ゆゆっ、ひんやりしちぇきもちいいよ」 「ゆっきゅりできりゅね!」 6匹の子供達全員を箱に入れると、開いた天井にぴったりなサイズの透明な板を乗せて行き、 手のひらでしっかりとはめ込み蓋をして巣の中に戻してやる。 全員を横一列に並べて、親まりさと同じように巣の外側を前面にしてあげると、 最初はひんやりとした壁に頬をつけて楽しんでいた子供達も圧迫感を訴え始めた。 広さに若干の余裕があるとは言え、飛び跳ねれば天井に頭をぶつける程度には狭いのだ。 「ゆゆ、せまいよ、おしょとにだしてにぇ!」 「ゆっくりできにゃいよ!」 「そう言ってるがまりさ、箱の外に出たいか?」 「ゆっ! でたくないよ、はこのなかのほうがゆっくりできるよ!」 「「ゆゆっ!?」」 自分達の箱よりも窮屈そうで、左右の壁に若干潰されているのに 平然とゆっくり出来ると言い放つ親まりさに、驚きの声を上げる子供達。 「お父さんはこんなにゆっくり出来てるのに、これくらいでゆっくり出来ないなんて 君達はゆっくり出来ないゆっくりなのかな?」 「ゆゆ、そ、そんにゃことにゃいよ!」 「れーみゅはゆっくりちてるよ!」 「そうだよ、はこのなかはとってもゆっくりできるよ、ゆっくりりかいしてね」 「ゆ、ゆっくりできりゅ…?」 「ゆっくりりかいしゅるよ…」 子供達は人間と親まりさ両方から否定されて困惑してしまう。 「いやー、まりさは本当にゆっくりしてるね」 「ゆっ、このなかでゆっくりできないなんておかしいよ!」 「本当に素晴らしいゆっくりだ、ゆっくりゆっくり」 「ゆっ! まりしゃもゆっくりしてりゅよ!」 「れーみゅだってゆっきゅりしちぇるもん」 目の前で繰り広げられる、箱の中はゆっくり出来ると言う胡散臭い会話に 子供達もゆっくり出来ると思い込んで行く。 その様子を見た人間は、「それじゃ、ゆっくりしてってね!」と言い残すと そそくさと立ち去って行った。 突然の行動に後に残された子供達は呆然とするが、親まりさが目を細めて ゆっくりしているのを見ると、自分達もゆっくりして母親の帰りを待つ事にした。 * この親まりさが箱の中でゆっくり出来ているのは、数日前に連れ去られた 人間の家での生活に起因している。 家族の元に返せと喚くまりさを連れ帰るや否や、背面にドアの開いた透明な箱に押し込むと、 まりさは窮屈な箱の中でずりずりと後退し、背中でドアを押し開けて箱から出ようとする。 「ゆぐぐ…ひどいよ! ゆっくりあやまっべぇっ!!?」 まりさが箱の外に出たら、木製のパドルで頬を叩く。 薄く平べったい板状のパドルは、叩いた力が広く分散する為皮も破れず 致命傷にはならないが、大きな打撃音と皮の表面に残る痛みがまりさに恐怖を植えつける。 「ゆびゅ、やめべっ、やめでべぇっ!」 パアンパアンと数回頬を叩いてから箱の中に押し込んでやると、 しばらくはパドルを恐れて箱の中で震えているが、まりさの視界に入らない位置に移動すると 「そろーり、そろーり」と声を上げながら脱出を試みる。 そうして箱から出る度にパドルで頬を叩いては箱に押し戻し続けると、 箱の外ではゆっくり出来ない、と言うトラウマがまりさの餡子に刻み込まれる。 それと同時に、箱の中ならゆっくり出来る、と言う記憶も植えつけてやる。 箱の前面の下側、まりさの口の前には横にスライド出来る小さな窓があり、 内側にだけ取っ手が付いている。舌を使って窓を開ければご飯が食べられる事を教え、 実際にくず野菜を与えてやる事で、野生では味わえない食事にまりさは涙する。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!!」 箱の外に出れば痛い板で叩かれる、と言う恐怖とのギャップから、 おいしい食事を食べられる箱の中がゆっくりぷれいすであると、まりさの餡子に強く印象付けられた。 元居た巣では備蓄した食糧が無くなり、親れいむが餌集めに奔走している間、 まりさは安全な箱の中でゆっくりした生活を満喫していたのである。 * 「ゆっくりおかえりなさい!」 「「ゆっくりおかえりなしゃい!」」 「ど、どうなってるの…?」 くたくたになりながら餌集めから帰ってきたれいむは、目の前の状況に困惑していた。 元々いい加減だった入り口の偽装は取り外され、巣の中では居なくなったはずのまりさと、 6匹の子供達が1列に並んで皆一様に透明な箱に入っている。 「ゆ! まりさ、どうしたの!?」 「ゆっくりかえってきたよ!」 「ゆゆ! どうしてみんな、はこにはいってるの!?」 「ゆっくりできるからいれてもらったんだよ!」 「「ゆっくりしちぇるよ!」」 「ゆ、ゆううっ!?」 一番端の箱に入っている親まりさに跳ね寄り、何があったのか聞くが ゆっくりに正確な説明を求めても、まずまともな返事は返って来ない。 つがいのまりさが帰って来たことは嬉しいが、あまりにも異常な事態は 親れいむの限りなく狭い理解の範疇を大きく逸脱していた。 「ゆゆっ、まりしゃおなかがしゅいたよ」 「ゆっきゅりごはんちょうだいね!」 「ゆ! まりさもごはんがほしいよ!」 満足のいく食事を取れていなかった子供達は、母親が持ち帰った食事の催促を始め、 親まりさもなんとなくで一緒に食事を求める。 母れいむも狩りに出た目的を思い出し、その場にゆべぇ、と餌を吐き出すと 子供達は餌に飛びつこうと跳ねるが揃って天井に頭をぶつけてしまう。 「ゆびぇっ! でりゃれにゃいよぉぉ!?」 「どうちたらいいのぉぉぉ!?」 「ゆっ! だいじょうぶだよ!」 親まりさの上げた声に子供達がそちらを見ると、まりさは箱の前面にずりずりと近づき 板の下方にある小さな取っ手に舌を引っ掛け、食事用の窓をスライドさせて開ける。 「こうすればごはんをたべられるよ、ゆっくりあけてね!」 「ゆっ、ゆっくりりかいしちゃよ!」 見れば子供達の箱の前面にも、親まりさの箱と同様に小さな窓があり、 内側に付いた取っ手で開けられるようになっていた。 親まりさは子供達が窓を開けたのを確認すると、 「ゆ! れいむ、ゆっくりごはんをもってきてね!」 と親れいむに声を掛ける。れいむも状況を理解しそれぞれの箱の窓の前に食事を運びだした。 食事用の窓が開くとは言え、箱自体を動かせない為近くまで食事を運ばないと食べられないのだ。 「「むっちゃ、むっちゃ、ちあわちぇ!」」 「むーしゃ、むーしゃ…」 子供達は遊んで体力を消耗する前に箱に詰められた為それなりに満足し、 親まりさもくず野菜と比べると味は落ちるがそこまで空腹でもなかった為、 眉をひそめながらも苦情は言わない。 人間の家での生活で、餌を持ってくる相手に苦情を言うと お仕置きをされると理解していたからである。 親れいむは子供達が問題なく食事を取れる事に少し安心し、また親まりさの帰還に胸を撫で下ろした。 狩りの上手なまりさが帰って来たので、後は箱から出せば前の生活に戻れる。 箱が絶対に開かない可能性など、れいむの餡子には浮かんで来なかった。 「ゆっ、まりさがかえってきてよかったよ」 「ゆ、まりさもかえってこれてうれしいよ!」 「それじゃ、つぎからはまりさがかりにいってね!」 「ゆゆっ!? はこのそとはゆっくりできないよ!」 「なにいってるの? ゆっくりしないではこからでてね!」 連日の狩りの疲れからストレスの溜まっていたれいむは、理解出来ないことを言い出す 親まりさにぷくぅと頬を膨らませ、出口が無いかと箱の回りを調べ出す。 広くは無い巣穴に一列に並んでいる為、箱と箱の間には成体が通り抜けられる程の幅がなく、 親まりさの箱の隣に居た子れいむの箱を押しのけながら親れいむは後ろに回り込んだ。 「ゆゆうっ!? お、おかーしゃんにゃにしゅるの…?」 「ゆ゛…ゆ゛え゛えぇぇぇぇん」 「うるさいよ! ゆっくりだまっててね!!」 「「ゆ゛っっ!?」」 「れ、れいむ、ゆっくりおちついてね?」 箱ごと押しのけられた子れいむは大きな揺れに怯え、 他の子供達も親れいむが発する険悪ムードに耐え切れず泣き出すが、 ストレスの溜まっていた親れいむは強く怒鳴りつけてしまう。 「ゆっ、はやくでてきてね!」 「ゆゆっ、あけないでね! ゆっくりできないよ!」 親まりさの箱の背面にドアを見つけた親れいむが、取っ手に舌を絡めてドアを開けると 背中に空気の流れを感じたまりさは落ち着けない様子で怯えだす。 一向に出てこようとしないまりさの様子にれいむは痺れを切らせ、 まりさの長い髪に噛み付いて引っ張り出した。 「ゆ゛っ、ぐり、ででぎで、ねっ!?」 「やめでぇぇぇ! いだいのやだぁぁぁぁぁ!」 木の板で叩かれる恐怖が蘇った親まりさは、ただでさえ狭い左右の壁に 突っ張るように体を変形させ、箱から引っ張り出されないよう抵抗する。 「いだい! いだい! ひっぱらないでねぇぇ!?」 「いだいなら、ででぎでねぇっ!?」 親まりさも親れいむも、どちらも全く引かず力比べを続けていると、 まりさの頭部がめりめりと音を立てはじめる。 「ゆ゛っ!? や゛めでね? や゛め゛ぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」 「ゆべっ! ゆゆ…ま、まりざぁぁ!?」 引っ張られる力に耐え切られずに、親まりさの後頭部がびりっと音を立てて裂けると、 急に抵抗が無くなった為親れいむは後ろに勢い良く倒れる。 痛がりながら起き上がった親れいむが見たものは、まりさの後頭部に出来た大きな裂け目と そこからぼとぼととこぼれる餡子であった。 子供達も絶句し、目と口を一杯に広げてぶるぶると震えている。 「ど、どぼ、じ、で…」 「まっ、まりざ、まりざ!」 裂け目から勢い良く餡子を漏らし、まりさは痙攣しながらぱくぱくと口を開閉させる。 親れいむは慌ててまりさに近寄るものの、おろおろするばかりで何も出来ないまま、 まりさは動かなくなってしまった。 一部始終を見ていた子供達も、目の前で繰り広げられた親同士のゆっくり殺しに 盛大に泣き出してしまう。 「おとーしゃぁぁぁぁん!」 「ゆ゛あ゛ぁぁぁぁん!!」 「おきゃあしゃんのばきゃぁぁぁぁぁ!」 「おかーしゃんにゃんておかーしゃんじゃないよぉぉぉ!」 「ゆ……ゆ……」 自分でつがいのまりさを殺してしまったれいむは、辛い狩りから開放される喜びから一気に突き落とされ、 子供からの罵倒に反論することも出来ず、白目を向いて気を失う。 散々泣いた子供達も次第に泣き疲れて眠り、騒がしかった巣からは寝息だけが聞こえるようになった。 数日が経過したが、巣の中は散々なものだった。 一際大きな箱には後頭部の裂けたまりさの死体が放置されており、 6匹居る子供は全て、ほとんど空間に余裕の無い箱に閉じ込められている。 「ゆっくりいってくるよ」 「……」 既に偽装が外しっぱなしになっている入り口から、親れいむがとぼとぼと出て行く。 子供達は目の前で親まりさを殺した親れいむに一切口を効いてくれなくなり、 代わりにじっとりと恨みのこもった視線を返して来るのみである。 食事だけは窓を開けてもくもくと平らげるが、しあわせー!の一言も無い。 元々母性の強いれいむは、パートナーを失った上で子供まで捨てることが出来ず、 前以上に疲れを感じる狩りの連続に体力だけでなく、希望もすり減らして行く。 幸い子供達は無駄に体力を消耗する遊びすらも出来ない為、 狩りが上手ではないれいむでも食糧難に陥る事は無くなったが、 順調に成長して行く子供達の体は、もう狭い箱の中で余裕が無くなっている。 このままでは子供達がゆっくり出来なくなる。 餡子の中に何か恐ろしい考えがよぎるが、ゆっくりの頭では どのようにして子供がゆっくり出来なくなるのか具体的な想像が出来ず、 れいむは餡子内に広がる焦りを払うようにぶるぶるっと震える。 「ゆ…ゆっくりかえるよ!」 頬に食料を溜めたれいむは、何かに追われるように家路を急ぐのだった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) ゆっくりいじめ系940 三角の頭巾 (fuku2628.txt) ゆっくりいじめ系1026 ゆっくり宅に挨拶 (fuku2789.txt) ゆっくりいじめ系1027 ゆっくりの救急車 (fuku2790.txt) ゆっくりいじめ系1062 甘い言葉 (fuku2852.txt) ゆっくりいじめ小ネタ151 みょん語体 (fuku2670.txt) お帽子の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/514.html
春先。 ゆっくり達にとっては、長く苦しい越冬が終わりを迎え、食料が不足する季節。 何とか食料を確保しようと、森を駆け巡り、畑に侵入し、民家にまで忍び込む。 あるゆっくり一家も、その例に漏れず人間の畑へ忍び込んでいた。 「ゆっくりできるくらい、おやさいさんがいっぱいだよ!!」 「ゆっくりたべようね!!」 「ゆゆ!! これまだちいさいね!!」 「でもおいしーよ!!」 「ここにいっぱいたべものがあってよかったね!!!」 自分達で見つけた食料を、美味しそうに頬張る一家。 畑の真ん中で、ささやかに行われている一家団欒。 無理も無い、冬の間厳しい食事制限があったのだから。 そのためか、荒々しく音を立てながらやってくる人間がいても気付く事はなかった。 「おい貴様ら!! なにやってるんだ!!!」 すなわち、直ぐに人間に見つかったのだ。 それでも、一家は食べる事をやめずに、未だ畑に居座り続けていた。 「ゆゆ!! ここはれいむたちがさきにみつけたんだよ!!! おじさんもゆくりしていってね!!」 「そうだよ!! このゆっくりすぽっとは、まりさたちが……」 「うるせーー!! ここは俺の畑だ!! おまいらが行かなきゃならねぇのは加工場だろうが!!」 ゆっくりなりの理屈を並べ立てる一家だったが、人間に通じる訳も無く、男はお構いなしに一匹のゆっくり魔理沙を踏み潰した。 「ぶぎゃら!!!」 少しだけ甲高い悲鳴を上げて朽ち果てた魔理沙。 その一匹の姉魔理沙が潰されたことが引き金になり、一家は蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってゆく。 「ゆ!! ゆっぐりしないでにげるよ!!」 本当ならまだまだ宴会が続くかと思われた時間。 その漆黒の闇の中を、命からがら逃げてきた一家が歩いていた。 「れーむのーー!! れーむのあがじゃんがーーー!!!」 「まりざのあがじゃんがーーー!!!」 この、ゆっくり霊夢と魔理沙夫婦は三十匹もの子供達がいた。 だが、それも先ほどまで。 我先に逃げていった子供魔理沙が一番に捕らえられ、その後は助けようとした姉たちがズルズルと捕まっていった。 「ゆーー!! おねーーじゃーーん!!!」 「もっどゆっくりしちゃかっちゃー!!!」 今残っているのは、つい最近生まれたばかりの赤ちゃんが六匹のみ。 半数の魔理沙に、半数の霊夢。 それと両親を合わせて八匹の家族。 全員が、薄暗い洞穴の中へ入って行く。 そこは、ゆっくり一家のお家だった。 しかし、昨日までは三倍・四倍近くいたゆっくり達の楽しそうな笑い声はもう聞こえない。 シーンと静まり返った音だけが、ゆっくりの家という場違いな場所で響いている。 「ゆーーーーーー……」 お母さん霊夢が声を漏らす。 大抵のゆっくりは直ぐに忘れてしまうが、いきなり大量の子供を失ったこの親はそうはいかなかった。 自分達が見つけた食べ物を人間に略奪されて、その上子供達まで持っていかれた。 しかし、力の無いゆっくりではどうすることも出来ない。 自分達は、人間とは比べ物にならないほど無力な存在だから。 「おかーさんゆっくりげんきだしてね!!!」 「れーむたちがいっぱいゆっくりするからね!!!」 「まりさもゆっくりするよ!!!」 お母さん魔理沙と子供達が一生懸命励ましてくる。 すると、次第にお母さん霊夢の顔も緩んできた。 「うん!! のこっためんなでゆっくりしようね!!!」 「「「「「うん!!! ゆっくりしようね!!!!」」」」」 その晩。 残った一家は何時もより近寄って眠った。 翌朝、まだ朝露が残っているうちから一家は人里に下りていった。 目的は、以前聞いたことのあるゆっくりブリーダーの話。 自分達が人間と一緒にゆっくり出来るように、色々なことを教えてくれる人がいるところ。 ゆっくり達のおぼろげな記憶だが、これだけはしっかり覚えていた。 「れいむたちもゆっくりできるね!!!」 「あそこでいっぱいごはんがたべれるね!!!」 昨日は、暗い気持ちで通ったゆっくり道。 しかし、今日は希望を持って進んでいる。 「ゆ!! れいむ!!! どこかにおでかけ?」 「むっきゅ~?」 ゆっくり道を抜けたとき、目の前に顔見知りのゆっくりアリスとゆっくりパチュリーが近寄ってきた。 どうやら、体の弱いパチュリーが出来るだけ平坦な所に家を移していたらしい。 「うん!! あのね!! あのね!!」 霊夢と魔理沙が、まるで漫才の掛け合いのように二匹に説明する。 昨日、忍び込んだ所で人間に追い掛け回された事、家族を沢山失った事。 そして、ゆっくりブリーダーの事。 全てを話し終わると、真剣に聞いていた二匹が自分たちも付いて行くと言い放った。 「とかいはのありすは、もっときょうようをみにつけたいよ!!!」 「むっきゅ~♪ ぱちゅりーももっといろんなことをしりたいよ!!!」 人間に襲われないように、と言う本来の趣旨とは外れているが、この二匹もそれぞれ思う所があったようだ。 「うん!! ありすもぱちゅりーもゆっくりしようね!!!」 「まりさと、れいむとこどもたちといっしょにぶりーだーのところにいこうね!!」 仲間が増えて、喜ぶ一家。 昨日減った分には及ばないが、馬鹿煩いアリスと、馬鹿へ理屈をかますパチュリーが加わった事で一家の笑顔も柔らかくなっていった。 「それじゃあ!! みんなでゆっくりぶーりだーのおうちにいこうね!!!」 「「「ゆっくりいこうね!!!」」」 出発するその集団を見つめていた大きな花。 まさに、その集団の賑やかさを象徴するような花だった。 だが生憎と、その花はポッキリと折れてしまっていたが…… ―― 言葉どおり、ゆっくりブリーダーの家へ到着したのは、お昼を回ろうかとした時であった。 「ゆっくりついたよ!!!」 「ここでれーみゅたちゆっくりできるんだね!!!」 「うん!! まりさについてきてね!!!」 そういうや否や、隙間を見つけ勢いよく中へと飛び込んでゆく魔理沙。 残されたゆっくり達も、一呼吸おいて中へ入ってゆく。 「ゆゆ!! ひろいおうちだね!!!」 「うわさどおりだね!! ここならゆっくりできるね!!!」 「「「ゆっくりできるね!!!」」」 「おや。どこからはいってきたのかな?」 ゆっくり達の背後。 家の中から優しそうな声が響いた。 ゆっくり達が顔を向けると、そこにはニコニコとこちらに微笑んでいる一人の男。 「ゆゆ!! れーむたちねぶりーだーのひとにあいにきたの!!!」 「まりさたちゆっくりしたいからここにきたの!!!」 「「「おじしゃん!! ゆっくりしゃせてね!!!」」」 「ああ。そうか。うん、ここで過ごしたゆっくりは皆ゆっくりしてるよ」 帰ってきたのは、希望通りの返事。 それを聞いて一団の顔がニッコリ緩む。 「でも、君達は少し勘違いしてるみたいだね」 「ゆ~? かんちがい?」 この人間はきちんとゆっくり出来ると言ってくれたのに、何処に間違いがあるのだろうか。 どのゆっくりもそんな顔をしていた。 それに気付いたのか、男はゆっくりとした口調で説明し始める。 「そう。ここはね、ゆっくりたちが人間達に襲われないようにするために、色々と教えているところなんだよ」 「ゆゆ!! じゃあ、さっさとまりさたちにおしえてね!!!」 「とかいはのありすがわざわざきたんだから、さっさとおしえてね!!!」 「むっきゅー!!! ぱちゅりーはすぐにおしえてほしいの!!!」 三匹のゆっくりが男を急かす。 しかし、男は一瞬苦笑を浮かべると、直ぐに元の笑顔に戻って話を続けた。 「そんなに直ぐには教えられないよ。前のゆっくり達も数ヶ月掛かってゆっくりできる様になったんだから」 「そんなことないよ!!! きっとそのゆっくりたちはばかだったんだよ!! まりさたちはすぐにおぼえられるよ!!!」 「そうだよ!! れーむたちにかかればすぐだよ!!!」 聞く人が聞いたら一瞬で美味しい餡ペーストが完成しそうな台詞だが、男は慣れているようで微笑みながら話を続ける。 「じゃあね。 1.人間のお家に勝手に入らない。 2.もし、人間のお家に入りたかったらきちんと挨拶をする。 3.言葉遣いにも気をつける。 4.中に入っても人のお家を荒らさない。 5.勝手に自分の家と言ったりしない。 6.食べ物を貰った時はきちんとお礼を言う。 7.決して横柄な態度で催促はしない。 8.ここで言う言葉遣いは、丁寧語、謙譲語、尊敬語をきちんと使い分け、なお且つその場において適切な言葉遣いを話す。 9.人間の作った畑と自然に群生している野菜との区別をつける。 10.その際、人間の作っている畑だったら勝手に食べない。 11.もし、食べたかったら頼んでみるなり、お手伝いするなりして分けてもらう。 12.その場合も言葉遣いに気をつける。 13.モノを食べる時は綺麗に行儀よく食べる。 14.にんげんのお家に住めるようになったからといって勝手に子供は作らない。 15.人間の話も、他のゆっくりの話も最後までキチンと聞いて理解する、間違っても自分の勝手な考えを押し付けない。 と、簡単な所はこれくらいだね」 「ゆ? れーむたちはじぶんのおーちしかはいってないよ?」 「とかいはのありすはことばづかいもきれいだし、しょくじのまなーもただしいよ?」 「ここまでは分かったみたいだね。じゃあ今からきちんと覚えたかどうかテストをするから、覚えていなかったらゆっくりできないよ! まずは……きみから」 男は、ワザと一番頭の良さそうなゆっくりパチュリーを指名する。 指名されたパチュリーは、暫く考えた後に、何か閃いたように元気よく答えた。 「むっきゅー!! む~、もし……人間の横柄な態度の催促だったら勝手に行儀よくたべる!!」 「残念。全然違うよ。このままじゃゆっくりできないね。ここから出たら直ぐに人間に捕まって加工場に連れて行かれるか、その場で食べられちゃうよ?」 予想通り、といった感じで、男はつらつらと文句を並べていく。 「ゆ!!」 まさに、青菜に塩、馬鹿に加工場。 一瞬で自信満々だったパチュリーの顔が青ざめり。 頭がいいことで通っているパチュリーが間違えた事で、周りのゆっくり達も動揺を隠しきれない。 「かごーじょーはいやだよ!!! ゆっくりできないよ!!!」 「まりざもいやーー!!! おじざんたづげてーーー!!!!」 「あれあれ? 君達はさっきこんなの簡単だよって言ってなかったけ?」 ワザとらしく、先ほどとは違う種類の笑みを浮かべながら、ゆっくり達に聞き返す。 「とかいはのありすでもおぼえられないよーー!!!」 「むっきゅ~~~~~~……」 「それじゃあ、ここできちんとゆっくりできるように頑張るかい?」 飴と鞭を巧みに使い分け、ゆっくり達をコントロールする。 その手際の良さは、流石ブリーダーといった所だろう。 「取り合えず。お昼は何も食べてないだろ? ご飯にしよう」 「!!! うん!! ゆっくりたべるよ!!!!」 「おじさん!! はやくまりさと、みんなのぶんもってきてね!!!」 「はいはい。っとそうだ、君達は何処から入って来たのかな?」 室内に向けた体を外に戻して、ゆっくり達に尋ねる。 対するゆっくり達はご飯を急かす。 「ゆゆ!! そんなことよりごはんをはやくもってきてね!!!」 「だめだよ! きちんと説明しないと。それとも、お外でゆっくりしようか?」 「ゆ!! おじさん!! おそとはだめだよ!! ゆっくりできないよ!!」 「じゃあ、どうやって入ってきたかおじさんに教えてくれるかな?」 「かんたんだよ!! あのすきまからはいってきたんだよ!!!」 胸を張って魔理沙が答える。 このゆっくり魔理沙は、早速人のご機嫌を取ろうとしているようだ。 「そうか。じゃあ君はご飯は半分だけだね」 「ゆ!! どーして? まりさはきちんとなかにはいれたよ!!!」 「うん。でもね、人間のお家に入るときは玄関で、今日はって言わないといけないんだよ。君達もお友達のお家に入るときに挨拶するだろ?」 「うん!! ありすのおーちはとってもおおきくてとかいはのおーちだし、ぱちゅりーは……」 「うん。わかった、わかったよ。ともかく、人間のお家でも挨拶をしないとだめなんだ。しかも、勝手に他の場所から入る事もいけないんだよ。わかったかい?」 「ゆ~~~。うん、げんかんでごあいさつすればいいんだね!!!」 「そう、挨拶の仕方は後で教えるよ。……それじゃあ、きちんと理解できたからご飯は一人前食べさせてあげるよ」 「ゆゆ!! おじさんありがとう!!!」 既に太陽は西に動いていたが、ゆっくり達はようやく昼食を取ることができた。 「よし! じゃあこれからゆっくりできる様に君達に教えていくよ!!」 舐めたように綺麗にした食器を見て、男はゆっくり達に声をかける。 何匹か、ゆっくりお昼寝するといったゆっくりがいたが、お外に連れて行くと言うときちんとおじさんの元へついてきた。 そしてその日は、基本的なことをゆっくり達に教えていった。 人間のお家に勝手に入る事、畑、仕草その他もろもろ。 勿論、一日で覚えることができたら苦労はしない。 インコに言葉を教えるように、何日も何日も同じ説明を繰り返す。 ゆっくり達も覚えるペースは遅いが、キチンと一個一個覚えていく。 畑の事を覚えた時、ゆっくり霊夢と魔理沙は自分達のやった事を理解して号泣した。 子供達が泣きながら励ましたが、それでもなかなか泣き止まない。 やがてもらい泣きした男が、泣き出しながら二匹を抱きしめた所で二匹の後悔のメロディーは止んだ。 そんな事が多々あったが、田植えが始まる頃になると、個人差はあるが最低限の事は理解できるようになった。 「きょうからはすこし外にでてみよう」 これ位なら外に出しても大丈夫。 男は長年の経験から判断して、野外学習に切り替えた。 「ゆゆ!! おじさんれいむたちおそとにでてもだいじょうぶ?」 「みんにゃでゆっくりできるにょ?」 知識が付くにつれ、ゆっくり達も自分達がどのように見られているのか理解できた。 そんな自分達が人間の多い所をうろついて大丈夫なのだろうか? 「大丈夫! おじさんといっしょだし。 君達はそこら辺のゆっくりよりはきちんとしているから」 背中を押してやる。 元々好奇心旺盛なゆっくりは、暫く迷っていたがおじさんと一緒なら安心だと言うことで外に出ることにした。 「ゆゆ!! おそとひさしぶり!!!」 「おかーさん、こっちでゆっくりしようね!!!」 「ゆゆ!! はなれちゃだめだよ!! まりさについてきてね!!!」 久々の外の世界を見たゆっくり達は、出る前の不安な気持ちを一気に脱ぎしててはしゃぎ出す。 「おーい! こっちこっち。さぁついておいで」 「ゆゆ!! ぴくにっくだね!! とかいてきだね!!」 「むっきゅ~♪ これくらいならぱちゅりーもついていけるよ!!!」 パチュリーのペースに合わせる様に男が向かったのは自分の田んぼ。 田植えを終えたばかりのその田園はどこと無く、奇妙な違和感がある。 「ゆ? おじしゃんこれなに?」 「これなーに?」 一番に好奇心旺盛な子供達が尋ねる。 「これはお米の子供だよ。ここから大きく育つと、おいしいごはんがとれるんだ」 「ゆ!! おこめ!! おじさん!! これみんなおこめになるの!!!」 「むっきゅ!! むきゅきゅ!!!」 一番の食欲の霊夢とパチュリーが興奮気味に尋ねる。 「そうさ。そこで、君達にお仕事がある」 「ゆ? おしごと? まりさたちに?」 「ゆゆ!! アリスはとかいはだからおしごとがんばるよ」 残った金髪饅頭組みが答える。 「ああ。この田んぼの中に、虫がいると育たないから虫を食べて欲しいんだ」 「ゆ? おむしさんがいるとだめなの?」 「ああ。むしは稲にとって害虫なんだよ。害虫はこの前教えたよね?」 「むきゅ!! お野菜とかをダメにするむしさんだよ!!」 パチュリーが勢いよく答える。 以前、全く覚えられなかったのを悔やんで沢山勉強していたのだ。 「そう。それで、君たちがキチンと働いてお米が取れれば、他の人間も君達をゆっくりさせてくれるよ」 「うん!! かんたんだよ!! れーむたちはむしさんもごちそうだもん!!」 「がいちゅーさんのむしさんは、まりさたちにまかせてね!!!」 そう言いながら、皆次々に田んぼの中へ飛び込んでゆく。 ためらうかと思ったアリスもすんなり入っていった。 「ゆゆ!! どろはとってもせいけつなんだよ!! とかいはのありすはにんげんともゆっくりしたいよ!!!」 唯の孤独感と虚栄心に裏打ちされた結果だった。 しかし、都会派都会派煩いアリスが、こうして自ら汚れてまで他の人の為にするというのはなかなかの進歩である。 粗方虫を飛べつくすと、男の合図でこの日の野外学習は終わった。 「みんなキチンと働いて偉いよ!! 収穫の時まで頑張ろうね。そうすれば、皆も人間とゆっくりできるよ!!!」 「「「「!!!!」」」」 ゆっくりできる。 遠いが、確実に見えたその目標はゆっくり達にとって大きかった。 人間達とゆっくりできるようになれる。 もう、掴まって食べられたりすることも無くなる。 ゆっくり達はおじさんから、ブリーダーに育てられたゆっくりは街のかなでお手伝いをしながら住んでいる、中には人間に飼われているゆっくりもいる、と言う話をよく聞かされた。 今までは、半ば絵空事の様に聞いていたが今では確実な目標として存在している。 その事が、ゆっくり達には嬉しかったのだ。 「それじゃあ、かえって体を洗ったらまたお勉強だよ」 「「「「うん!!!! ゆっくりできるようにおべんきょうするよ!!!」」」」 ―― 稲もよく育ち、見慣れた田んぼが現れ始め、夏がやってきた。 この頃には、男が熱心に教えた甲斐があり、多少たどたどしいがそれなりに挨拶ができるようになっていた。 「こんにちは。ゆっくりさせてくださーね!!」 「いらしゃい!! おじさんのおーちによこそ!!」 近頃は、お互いのお家に来たという設定でゆっくり自ら勉強している。 普段は飽きっぽい性格だが、自らがずっとゆっくりできる為に必死になっているのだ。 しかし、その晩ちょっとした事件が起こった。 みんなで食事を取っている時に、ゆっくりアリスの大群が押し寄せてきたのだ。 「まままままりざーーー!!!!」 「れーーーむうーーーーーー!!!!」 「ありすはみんなだいすきだよーーーー!!!!!」 集団はそう言って、一番身近にいたゆっくりパチュリーに襲い掛かる。 「むきゅーーー!!! だずげてーーー!!!」 「ぱちゅりーー!!! ありすやめてね!! みんなをはなしてね!!!」 「れいむ!!! まりさ!!! ありすもいるーーー!!!」 「みんなだいすきだよーーー!!!!!」」」」」 涎をダラダラ出しながら、一気に迫ってゆく洋菓子軍団。 しかし、今は食事中であった。 なので当然、男もここにいた。 「おい洋菓子饅頭!!」 「すすす、すっきr――んびゃ!!」 近くに来たアリスを一匹捕まえて、籠に放り込む。 その後も、必死になって交尾をしようとするアリス達を片っ端から籠に突っ込んでゆく。 時間にして僅か15秒、捕まえたゆっくりアリスは15匹。 「ゆゆ!! おじさん!! とかいはのありすたちをどーするつもり!!」 「はやくそのこたちのこどもをつくらせてね!!!」 散々わめき散らすアリス達をそのまま外に連れて行く男。 「君達はここでは教育できないね。明日になったら、加工場よりもゆっくりできる所に連れて行ってあげるからね!!」 「!! かこーじょーわやだよ!! とかいはのありすたちはいいゆっくりだよ!!!」 「おじさんたすけてね!! いまならみんなおじさんのるーむめーとになってあげるよ!!!」 叫び声は一段と大きくなったが、男は気にせず家の中へ戻っていった。 翌日から、そのアリス達はクレープ作りに従事することとなった。 「ぱちゅりー!! ゆっくりできる? ゆっくりしてね!!!」 中では、一番酷くやられたパチュリーを囲むように他のゆっくりが心配そうに眺めていた。 「むっきゅ、ゆっくり、できるよ!」 息は荒いが、心配はない。 男がそう伝えると、お祭りのように騒ぎ出すゆっくり達。 その中の、お母さん魔理沙を見つけた男は頭を撫でながら声をかけた。 「えらいな! 真っ先にパチュリーの元へ駆けつけて!」 「ゆゆ!! とうぜんだよ!! おともだちがゆっくりできてなかったもん!!! まりさはもうにげないよ!! こどもたちもおともだちもまもるよ!!!」 さも当然、と言うように魔理沙は言ってのけた。 直後に霊夢が魔理沙を呼んだので、直ぐにそっちに行ってしまったが、大抵我先に逃げる魔理沙が自分から向かって行ったのだ。 これは、ブリーダーだったならば、誰しも涙を流して喜ぶ瞬間だった筈だ。 男も、急いで台所へと足を運ぶ。 「よし! きょうはパチュリーが元気になるお祝いにしよう!!」 台所から、沢山のお菓子を持ってきた男が宣言すると、ゆっくり達も元気よく賛成した。 「「「「うん!!! ぱちゅりーはやくげんきになってね!!!」」」」 「むきゅ~♪ げんきになるよ!!!」 蒸し暑い、よどんだ空気も吹き飛ばすくらい、賑やかで晴れやかな夜となった。 ―― 稲が黄金色に輝き、水田の水も抜けきった。 この頃には小さかった赤ちゃんゆっくりも、体はまだ小さいが赤ちゃん口調は抜けてきた。 この日、ゆっくり達は男に連れられて近所の家へ出かけた。 ゆっくりできるかテストだよ。 男にそう言われたゆっくり達は日頃の成果を存分に発揮した。 「こんにちは!! ゆっくりさせてもらえますか!!!」 これはお家に入るときの挨拶。 「おじゃまします!!」 中に入れてもらえるときの挨拶。 「いただきます!!」 モノを貰って食べるときの挨拶。 「むしゃむしゃ」 食べるときは、食べ溢さずにキチンと口の中に入れる。 「おいしかったです!!」 食べ終わった後に言う台詞。 「さようなら!! またゆっくりさせてください!!」 お家を出て行くときの挨拶。 それを終えると、男と、その家の家族から拍手が送られた。 「うん。合格。後は明日収穫予定の米のでき次第だよ!!」 「いやー。一家全員で楽しみにして待ってるよ! ゆっくりがんばってね!!!」 「「「ゆっくりがんばるよ!!!」」」 おじさんだけではなく、始めて会った人間からも褒められたことがゆっくり達には嬉しかった。 そして、合格と言ってくれた事も。 その日、ゆっくり達は興奮してなかなか寝付けなかったが、明日の為に随分早い時間から床に入ったので、結果的に睡眠は十分取れた。 そして、今日は待ちに待った収穫の日。 この日の為に毎日泥だらけになりながらもキチンと仕事を続けたゆっくり達には特別な日である。 「ほら、良い稲だ!! この束をあっちにはこんでくれ!」 「うん!! いっぱいなってるね!! ゆっくりすぐにはこぶよ!!!」 自分達がキチンと働いた田んぼからちゃんとお米が取れれば、人間達とゆっくりできる。 「んーしょ! んーしょ!! ふう~」 言われた場所に稲を運び終わったゆっくり霊夢は、他のゆっくりに聞こえるような声で叫んだ。 「みんなみて!!! れいむたちがおてつだいしたおこめがちゃんとできてるよ!!!」 「ゆ!! ほんとうだ!!!」 「やったねおかーさん!!!」 「これでみんなゆっくりできるね!!!」 大きく育った子供達も、パチュリーもアリスも、その成功が意味する事を知っている。 だからこそここまで嬉しくなるのだ。 今まで苦労して、人間とゆっくりするためにこの日まで頑張ってきたのだ。 「おーい!! よろこぶのもいいけど、こっちもてつだってくれ!!」 沢山の稲を抱えて佇む男。 その元へ慌てて皆で駆け寄っていくゆっくり達。 その顔はいつか見た花のように燦々と輝いていた。 「「「「おじさん!! いまゆっくりいくよ!!!!」」」」 その夜。 昇り始めた月には、はっきりとウサギの陰が映っているが、この家の住人だけはそんな事は関係なかった。 「ゆっゆ♪ まりさおいしようだね!!!」 目の前には、 「ゆ~♪ れいむもがんばったもんね!!!」 このひまで、 「「「おかーさんがんばったよ」」」 泥だらけになりながら、 「「「れーむたちもがんばったもんね♪」」」 がんばってお手伝いした、 「やっぱり、とかいはのありすはしんまいがにあってるね!!!」 田んぼの新米が、 「むっきゅ~~~♪」 大きなたらい入って湯気を立てていた。 まさに銀シャリと言うに相応しいその米の輝きは、ゆっくり達がゆっくりできるように頑張った苦労を称えているかのようであった。 「おめでとう。君達は随分礼儀正しくなったよ!! これならもうだいじょうぶ!! 明日からは、このお家を出て、この街でゆっくりくらせるよ!!!」 そう言う男の目に涙が流れている。 余程この日が待ち遠しかったのだろう、嗚咽交じりになりながらゆっくり一匹一匹に声をかけていく。 「おじさん!! なかないでね!! 時々遊びにくるから!!」 「うん!! げんかんからこんにちはしてはいってくるよ!!」 「とかいはのありすは、おてつだいしてもらったたべものをもってくるよ!!!」 「むっきゅ~!! ぱちゅりーもおはなしいっぱいおぼえてあそびにくるよ!!!」 一匹一匹、男の事を心から心配して、時々遊びに来ると口々に男に話す。 まるで、小さい頃から育て上げた娘が嫁いでゆく時のようだ。 おそらく、以前のゆっくり達を育てたときもこのようなやり取りがあったのだろう。 「……ああ。いつでもおいで!! ゆっくりまってるよ!!!」 「「「ゆっくりまっててね!!!」」」 その後に訪れる笑い声。 長く過ごした、ゆっくりと男だけが知っている笑いだった。 「よし、ごはんが冷めるからさっさと準備しようか?」 「うん!! じゅんびてつだうよ!!!」 「よしよし。でもその前に、苦労して作ったご飯をちょっとつまんでみな!」 そう言って、たらいのご飯を少量紙皿に移した男はゆっくりの前にそれをおいた。 口の周りに付かないように注意しながら食べて言うゆっくり。 「おいしい!! おじさんこれすっごくおいしいよ!!」 「そりゃあ、君たちが苦労してお手伝いした田んぼだもんな!」 「むしゃむしゃ……。おいしーね!!」 「ねーー!!」 どうやら、今年の米も上々のようだ。 つまむ程度なので、決して多い量では無いがゆっくり達は文句も言わず笑顔で食べ終えた。 少々もち米が混ざっているようで少しべたつきがある。 これも、今夜のメニューに必要なものなのだろう。 「おいしかったよ!! はやくおりょうりつくろうね!!」 そう、今は料理の途中だったのだ。 以前は食欲だけが先走っていた霊夢もキチンと我慢することができるようになっていた。 今日の献立は聞かされていない、しかしきっと最後の食事は豪華なものになるのだろう。 「うん。ところで皆前に話した害虫のお話は覚えてる?」 「むっきゅ!! かってに野菜とかを食べちゃうむしさんのことだよ!!!」 パチュリーが元気よく答えると、周りからも似たような答えが返ってきた。 「うん。きちんと覚えていたね! それじゃあお料理を初めようか?」 それだけ言って、男は今晩の夕食作りに取り掛かる。 「とかいはのありすはしってるよ!! こういうときはでなーっていうんだよ!!」 「ありすはものしりだね!! ……ゆ?!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!!!」 突然、この家からは聞こえるはずの無い声が響いた。 それは、よく加工場や紅魔館から聞こえる声。 「れ!! れいむのこどもがーーー!!!」 そう、つまりはゆっくりの叫び声。 対象は子供霊夢だった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!! お、おじさん!!!! どうじてーーー!!!!」 既に瀕死の重症を負った子供霊夢は、残った力を振り絞って男に尋ねる。 きっと、何かわけがあるはずだと考えて。 「だって………………から」 「ゆ! ゆっくりじだがっだーーー!!!!!! ……」 そして、何時も通り男から何か理由をを聞かされると、そのまま息絶えた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!! れーむのこどもがーーーーー!!!」 「まりざのこどもがーーー!! おじさん!! どうしてこんなごとするの゛ーーー!!!」 二匹目のゆっくり、子供魔理沙を引きちぎっている男に詰め寄る二匹。 「どうじだの!!! わるいものでもたべたの?!!!」 「それども、そのごだじはゆっくりできないの?!!!」 生き残った自分の子供達を失ったことで親はかなリ動転している。 「そんなこと無いよ。この子は皆と同じだよ!」 子供魔理沙の餡子をたらいの中へ移した後に、ゆっくり達に向き直って男は微笑んだ。 「だったらなんで!! なんでれーむのあがじゃんを……」 「なんで? だって君達は害虫だよ。勝手に畑を荒らすし、人の家も荒らす。唯の害虫の方がまだましだよ。生憎と、 害虫はキチンと教育しても害虫だからね。キチンと処分しないとね」 場が凍った。 湯気を上げ続けるたらいだけが、この異常な場から抜け出している。 「ゆ? おじさん!! れーむたちはぶりーだーのおじさんのところでがんばったよ!! ゆっくりできるんでしょ!!!」 「そうだよ!! まりさたちはがんばったよ!! おじさん、これもおべんきょうなんでしょ!! こどもたちもほかのばしょにいるんでしょ?」 「……」 その問いかけに答えずに男は四匹の子供ゆっくりを掴んで。 「ゆゆ!! おじさん! ゆっくりさせてよ!!」 「ゆっくりできるんだよね!!」 「……」 「「「「ゆっびちゃ!!!! ……」」」」 力を込めて、凍った場を一気に溶かす。 溶かすと言うよりも砕くといったほうが良いのかもしれないが……。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……れーむのこどもが……」 「まりさの……まりさのかわいいこどもが……」 呆然と桶の中を眺める二匹。 その横では、パチュリーが引きちぎられようとしているが、この二匹は助ける元気が残されていなかった。 ただ、呆然と見つめているだけだ。 「むっきゅ!! おじさんはさいしゅうしんさをしてるんだよね?!! ぱちゅりーはゆっくりしたいよ!!!」 「良いとも。いったろ? ここで過ごしたゆっくりは皆ゆっくりしてるよって。君もずっとゆっくりできるよ。ほら、今処分してあげるから」 「いだ!! いだいよーーー!!! ゆっぐりざぜてーーー!!!!」 暫く力いっぱい千切ろうとしたが、子供のようにはいかないようで包丁を取り出して頭の上を切りとる。 「はぁはぁ……!! むきゅ? ぼーじ!!! ぼーじがえして!! あ!! あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!!!」 間髪いれず、しゃもじで中の餡子を掻き出していく。 「むっきゅ!! ごめんなざい!! おじさん!! ゆる!! じで!!! ……」 男は、大量の餡子を桶の中へ移し、饅頭の皮はゴミ箱に捨てた。 「さてと、次はこっちを先に料理するか」 男が向かったのは、呆然としている二匹ではなく、ゆっくりアリスだった。 「ゆゆ!! おにーさん!! ありすはとかいはだからきちんとゆっくりできるよ!!! だからもうさよならするよ!!!」 慌てながら、出口に向かっていこうとするアリス。 それを逃がすはずも無く、男は捕まえたそれをまな板の上へと運んだ。 「お、おじさん!! ありすはとかいだがr……」 「関係ないよ。君達は害虫だって言ったろ? 特にお前は、はつかねずみ以上に性質が悪い害虫だよ。かってに害虫の数を増やしちゃうしね」 「ゆ? ちがうよーーー!! ありずはがいじゅうじゃないよーーー!!!」 沸騰したお湯の中へ袋ごとカスタードを入れる、そのままだと固まっているので調理し辛いのだ。 「あづいーー!!! おじざんあづいよーー!!! だじでーーー!!!」 全体に熱が伝わるように、時々かき混ぜる。 袋の開口部を下にすると、騒音も気にならない。 「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!」 暫く経ったらお湯の中から取り出す。 「おじざん!! ありずはどがいはじゃないですーー!!! しゅーだんしゅーしょくでじだんでずーーー!!!!!」 額に大きな穴を開け絞り出す、このとき中のカスタードは熱いので注意が必要である。 「あがっががあああああーーーー!!!!!!」 取り出し終えた袋をゴミ箱へ捨てる。 どうやら、これはクレープに使うようだ。 「よし、こっちも仕上げだ」 「……ゆ~?」 「……おじ……さん?」 未だ呆然としている二匹の前に近づく男。 それを見て二匹はここ数ヶ月のことを思い出した。 勝手に人間の畑を荒らして子供達が沢山いなくなった。 そして、残った家族でゆっくりしようとブリーダーのお家へ向かった。 初めは大変だったけど、一緒に来たアリスやパチュリーと一緒に頑張った。 色々覚えた頃、初めてお外に行った。 そこで、人間の田んぼを手伝った。 これが上手くいけばゆっくりできると思ったから一生懸命頑張った。 アリスが大勢着たときも、逃げずにパチュリーを守った。 以前の子供たちのように失いたくなかったから。 テストもキチンとできた。 その後、キチンとご飯ができた。 それを、おじさんが食べれるようにしてくれた。 がんばったご飯は美味しかった。 これでおじさんのお家から、街へ出てゆっくりできる。 その筈だった。 「いいかい? よーくきいてね!!」 男は、今までゆっくり達にモノを教えているときと同じ口調で話し始める。 「おじさんはゆっくりブリーダーです。でもキチンと勉強したゆっくりを、おじさんはお外に出しません。田んぼを手伝って美味しいご飯ができたら お外に行けると言ったのも本当です。でもおじさんはお外には出しません。それは、キチンと自分の事を理解した害虫が、最後に害虫として死んでゆ く時の絶望した顔を見るのが好きだからです。そして、私はまだ二十台なのでおにーさんです」 「ゆー。れーむはゆっくりできるの? ちゃんとごはんもできたよ?」 「まりさも、ちゃんとごはんつくるのてつだえたよ。にんげんとゆっくりしたいよ!」 幾分、表情が元に戻ってきた二匹は、再度男に尋ねた。 今まで、頑張ってこれたのは人間とゆっくりしたかったから。 「できません。君達は害虫だから。害虫は害虫らしくゆっくり死んでね!!!」 ゆっくり達の答えも聞かず、餡子の袋の上部を切ってゆく。 「ゆーー!!! いだいよ!! おじざんれいむだぢをゆっぐりざぜてーー!!!!」 「まりざたちはゆっぐりじたいよーー!!!」 そのまま、餡子の袋から餡子を取り出す。 「あっががあああ!! やめでぇーー!!! れーむのながみだざないでーーー!!!!!」 「まりざのあんごがーーー!!! おじざん!! もどしで!!! もどしでね!!!」 そういっている間にも、ドンドン餡子の量は減ってゆく。 「「…………ゆ!!」」 絶望し途切れそうになる意識の中で、二匹は自分達を呼んでいる声を聞いた。 「おかーーしゃーーん」 「ゆっくりしよーーね!!」 「「……こどもたちだ……」」 それは、失った子供達の姿。 「むっきゅーー!!」 「とかいはのありすはじかんにるーずなの!!!」 「「ありす……ぱちゅりー……」」 そして、今まで苦楽を共にした友人だった。 「「っ!!!」」 まっていまいくよ!! そこ言葉を、まさに発しようとした時だった。 「畜生に神はいないよ♪」 「「……ゆっぐりぎだがった!!!」」 忽然と、周りからゆっくり達の姿は消えた。 そして、最後の最後で完全に絶望した餡子袋も、ゴミ箱に捨てられた。 今日の男の食事はおはぎとクレープ。 しかし、一つだけ違うことがある。 それは、おはぎを多く作った事。 理由は簡単だ。 米を無事収穫できたお祝いに、近所の人へおはぎを配るためだ。 月が綺麗に夜空に舞う頃、おはぎを配り終えた男は、何時ものように一人だけの食事を取って床についた。 ―― 一面、白い雪化粧で覆われる冬。 田んぼは子供達の格好の遊び場になる。 食事を支えるこの土地は、この間は子供が笑顔で過ごせるように、沢山の雪を蓄えた。 ―― それが、土に帰る春。 村では野菜や稲の準備が始まる。 それは、同時に男の仕事始めでもある。 「おや? 君達は何処から入ってきたのかな?」 その日も男はペット一匹居ない家で一人で食事を取る。 田んぼはまだ何もない。 ただ、これからお世話をするであろうモノ、その餡子の様に黒い土に覆われているだけだ。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1436.html
流れを読まずゆっくり阿求。 途中まで見たら、大体オチがわかる仕様になっております。 ここは永遠亭。机をはさみ、向かい合う永琳と阿求。心なしか、永琳の目には疲れが見える。 「私は考えた。どうすればAQN症候群を治せるのか・・・・。 ゆっちゅりーを育てさせれば、AQN症候群ゆっちゅりーを生み出すし、 東風谷早苗に相談したら、トラウマを植えつけられて神様が怒鳴り込んで来るし、 上白沢慧音に至っては、廃人になりかけて入院中。 そこで永遠亭の総力を結集して作ったのがこれ!」 机の上におかれたのは、1匹のゆっくり。 「あきゅー!」 「これを育てることが、今の貴方にできる善行y」 フォン、グシャ。 皆まで聞かず、阿求はゆっくり阿求にげんのうを振り下ろしていた。 「別に、自分のゆっくりだからといって、いいえ、自分のゆっくりだからこそ、殺し甲斐があると思いませんか?」 断じる阿求。 対するは笑みを浮かべる永琳。 「ふふふ・・・かかったわね」 げんのうの下で、むくむくと蠢く、ゆっくり阿求だった餡子の塊。 それが見る見るうちに、形作り、元のゆっくり阿求となった。 「あやー!」 「これは・・・!」 フォン、ボヨン。 再度げんのうを振り下ろす阿求・・・しかし、げんのうに伝わるのは、先ほどとは全く違う感触だった。 「これぞ、ゆっくり阿求の特性・・『⑨の試練』 ゆっくり阿求は9回殺さなければならない上に、一度食らった攻撃は二度と通じないのよ! ふふ、確認されている限り、鈍器による撲殺、針による刺殺、素手による殴殺・・・それぐらいかしら? 特殊な戦闘能力を持たない貴方には、これ以上ゆっくり阿求を殺し切ることは出来ないわ!!」 勝ち誇る永琳。 それを聞き、阿求は一言だけ呟いた。 「稗田家なめんな」 打潰す饅頭『ナインライブズゲンノウワークス』 背中を見せる程引き絞った特異な構え・・・それより繰り出される一閃九打の絶技によって、ゆっくり阿求はあっさり9回殺された。オーバーキルである。 あまりのショックに永琳は9日間寝込んだ。 月廚?ふぁて?なんのことです? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1341.html
竹林の奥に、ひっそりと佇む、月から幻想郷へと移り住んだ者達が住む永楽亭。 その地下には、和風の屋敷には不釣り合いな内装の研究室がある。その部屋の中で机に座った、看護師のような服を着た銀髪の美し い女性が片肘を突きながらガラスケースに入った何かを見つめていた。 「おねえさん!おめめがいたいよ!おうちかえる!」 大きめのガラスケースに入っているのは、今や幻想郷でお馴染みとなった。ゆっくりれいむだった。 しかし、何やら様子がおかしい。 「なにもみえないよ!」 ゆっくりれいむの両の眼球には、手術用のメスが深々と突き刺さっており。その眼からは、涙と餡子が混ざった液体が流れている。 ガラスケースの中には、その液体が飛び散った跡があり、ゆっくりれいむが痛みで暴れていた痕跡が窺える。 「あらあら、何も見えないのね?それじゃあ、お友達の姿も見えないし、お花見もできないわね?」 微笑みながら、ゆっくりれいむに語りかける銀髪の女性は、“月の頭脳”こと、八意永琳だ。 「ゆっくりできないよ!」 体を左右に揺らしながら訴えるゆっくり霊夢。 「うふふ、私はとってもゆっくりしてるわよ?」 ニコリっとする永琳。その優しい笑顔で何人の男性を虜にしてきたのか。 「ゆっくりさせてよーっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「ゆっくりれいむちゃん、安心して?私はお医者さんなのよ?こっちにいらっしゃい?あなたのお目々を治してあげるわ。」 永琳がそう言うと、少し間をもった後、ゆっくりれいむは声のする前方へ恐る恐る向かう。 ゴツッ 「ゆ゛ぐぅぅぅううぅぅっ!!!」 しかし、ゆっくりれいむの前には当然、ガラスケースの面が立ちはだかっている。両目のメスはより深く突き刺ささる。 実は、こんなやり取りがもう五回程続いている。 激痛に泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「あら、ごめんなさい。ケースの扉を開けるのを忘れていたわ。ほら、もうこっちに来れるわよ。」 もちろん、そんな扉は無い。 「もうやだ!おばさんはうそつきだよ!!!」 さすがに知能の低いゆっくりでも、こう何度も騙されていたら少しは学習するようだ。 しかし、ゆっくりれいむがせめてもの抵抗で発した。その単語がいけなかった。 「お・ば・さ・ん…?」 突如、八意永琳の顔が豹変した。顎を思いっきり横にずらしながら歯ぎしりし、眉毛は釣り上がり、目線は斜め上に向かっている。 顔中にシワが走り、血管が浮き出る。 「だ・れ・が、おばさんじゃこのちくしょうがあああぁあああぁあぁぁぁっ!」 永琳は凄まじい勢いで席を立つと、棚から濃硫酸の入ったビンを取り出し、すぐさま元の席にかけ戻り、ゆっくりれいむの 入ったガラスケースの上部の扉を開け、ドボドボと濃硫酸をそそぎ込んだ。 「ゆぅーーーっ!!!」 どんどん溶けていく、ゆっくりれいむ。 「わしはまだまだティーンエイジャーじゃああああああっ!!!」 発狂しながら濃硫酸を注ぎ続ける永琳。 「[[ゆっくり]]ゆるしてね![[ゆっくり]]ゆるしてね!」 必死に命乞いをするゆっくりれいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ……。」 しかし、ゆっくりれいむはドロドロの液体になり、ガラスケースには饅頭のジュースが出来上がった。 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅ……。」 肩で息をしながら、我にかえる八意永琳。 「あらいやだ、もっと時間をかけて楽しむつもりだったのに……。うどんげっ!うどんげっ!!」 「はい!何ですか師匠!!」 八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバが部屋へと駆けつける。 「このドロドロの汚いの、皿に分けて隣の部屋のゆっくりどもの餌にしておいてちょうだい。」 「はい!師匠!」 ガラスケースを抱え上げ、部屋を後にするうどんげ。 「…!」 ふと、あることに気づく八意永琳。 「あらあら…私ったら…ウフフ……。」 彼女の股は濡れていたのだ。 狂気を操る自分でさえ、師匠の持つ狂気にはかなわないだろう。 ガラスケースの中の、溶けたゆっくりれいむを見つめながら、うどんげはそんなことを思っていた。 今宵は新月、永楽亭の静かな夜は続いていく。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/843.html
流れすべて無視、俺設定俺仕様(ぁ エレエレ表現をみて使いたくなった、それだけ。 初投駄文御免。 ~~~~ ゆっくりごときに家を荒らされた、それだけなら怒ったりはしない。だかあいつは3日間寝ないで作った1/100紅魔館モデルを餡子まみれにした。ゆっくりれいむ、てめーは私を怒らせた。 とりあえず修理パーツの品物到着は3日後といわれたのでそれまでゆっくりでもエレエレさせてやるか。 初日。 「・・・ゆ?ここどこ?ゆっくりだしてね!」 お目覚め。とりあえずこいつが寝ている間に発掘したヤバい感じに醗酵してる酒やなりかけてるものを集めて飲ませる準備は完了。ゆっくり拘束透明Boxは便利でいいね!カスタマイズ万歳。 「ゆ?おねーさん、ひとりごとこわいよ!ゆっくりはやくあけてね!」 さて、独り言が酷くならないうちにゆっくりと飲み比べでもするか。 「さて問題です。ゆっくりしたければ私より酒が強いことを証明しなさい。」 「へいきだもん。れーむはおさけにつよいよ!」 「ほぉー。んじゃ軽く50%ぐらいからいくか。」 当然経過を見るために私は水、ゆっくりには似た度数を混ぜたものを飲ませる。ずっと私のターン。 「・・・ゆ?なにこのにおい。れーむのめないよ!」 「あぁ?強いんじゃないのかよ。飲めないなら無理やり飲ませるだけ出し安心しな。」 「ふざけないでね!もっとじょうsふぉwふぃえw;あj」 あー五月蝿い。飲まないなら直接注ぎ込んでやらぁ。汚物は消毒だー。 「からだがスースーするよ!ぽかぽかするよ!ゆっくりできるよ!」 流石50%。半分は伊達じゃない。ぽかぽかするのは下で地味に温めているからだ、痴れモノめっ。 80%までを体半分までつかるようにして放置。なんかギャーギャー五月蝿い。蓋したら静か。流石万能Box だるいから適当に食べ物を入れておく、ウイスキーチョコだけどな。ふひひ。 二日目。 「ゆ゙~~~ゆ゙~~~」 おー水分も飛んでる。かあさん、赤くなったゆっくりれいむが3倍ほどゆっくりしてます。すごく・・・ゆっくりです・・・ 「お゙ね゙ーざん゙、ゆ゙っ゙ぐり゙で゙ぎる゙よ゙~♪」 できあがっとるできあがっとる。まだ仕上げじゃないのにこれは凄いわ。 「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙」 何か急に震えだすゆれいむ(名前長いねん。)試しにぷにぷにしてみる 「も゙ゔじ゙ま゙ぜん゙が゙ら゙ゆ゙る゙じ゙で゙~~!!」 トラウマにHitしたっぽい。やさしくなでてみる。なでなでなでなでなで・・・・ 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ」 ちょ、違う赤みを帯びてきた。発情しましたか。かるく蔓が延びてるんですけど。手を止めてみる。あ、しぼんだ。さようなら新しい命。ゆれいむがモノ欲しそうな顔をしている。さらになでますか?→ぜってぇしねぇ。 少し堪能したから目的をするか。ててれてってれー。アルコール99%~まぁ消毒液なんですけどね。殆ど。どぼどぼどぼど・・・ お、飲んでる。おー・・・全部飲むのかよ。どぼどぼどb・・・うぇ。飲むのはえーよ。 三日目 あれから2リットルぐらい飲んだ。ヤバめの酒全部なくなって助かりました。一方Boxのゆれいむ。 「ゆ゙~~~~~~~~~~~~っぐり゙でぎな゙~~~~~~い゙!」 頭に響くのか控えめに強調。水分は飛ばしてあるっつーか殆どなかったけど飛ばしたので皮崩れ無し。透明な袋(○○都指定とかそんな大きさの。)に入れる。そしてにとり様特性ぐるぐるマシーンにセット。 「ゆ゙?」 さぁお楽しみの時間です。 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるみんぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる ~しばらくお待ちください~ 赤かった顔が青になりゆかりんになり土色になったところで止めて袋から取り出す。何かを必死に絶えてます。 やさしい私は背中(つっても後頭部)を優しく愛撫するようにすりすりすりすり・・・ 「や゙め゙え゙え゙え゙え゙え゙で゙え゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙えぇうぇ」 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ おーでるでる。撫でるたびに出るのが楽しい。このとき死なないように砂糖酒かける俺最強。まぁこの吐餡子から作るんだけどな。 「ゆ゙っ゙ぐり゙で゙ぎな゙い゙よ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぅ゙ぇ゙」 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ こんなやりとりを3時間続けてたらパーツが届いた。ひゃっほ~ 殆ど黙ったゆれいむの返事がない、ただの屍のようだ。 10秒ほどオレンジジュースにつける。 「すっきりー!」 うわ、はや。なにこれ。むかつくから砂糖酒につける、とりだす。 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ ポカー・・・見事に酒豪の仲間入りねっ☆ 「じだぐな゙い゙い゙い゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぅ゙ぇ゙っ゙」 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ あ、餡子全部でた。 Fin このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/183.html
「あ”ー、暑い」 買い物行くなら夕方に行けばよかった。 真夏の昼間は日差しが強く、しかもまとわりつくような暑さだ。 (家に帰ってアイスでも食べよう) そんなことを考えながら家路に就く。 我が家はアパートの二階の一室なのだが、アパートの階段を上ろうとしたときに ゆっくり霊夢が階段の脇、影になっている所にいるのを見つけた。 ゆっくりは俺と目が合うと 「ゆっくりしていってね!」と小さく叫んだ。 この暑さのせいだろう。あまり元気がない。 「やあ、そんなところで何をしてるの?」 声をかける。 ゆっくりは話しかけられたことが嬉しかったのか、目を輝かせて答える。 「お日さまがあつくてゆっくりできないからここにいるんだよ!!」 さらにゆっくりは言葉を続ける。 「ここはれいむひとりでいっぱいだよ!!」 や、別に取ろうとしてないし。 まぁそんなことはどうでもいい。このゆっくりは家に持ち帰ろう。 自分でも変な感性かも思うが、ゆっくりって可愛いよな。 ぜひともペットに欲しかった。そして・・・いや語るまい。 ともかくだ。 ゆっくりを持ち帰るのは簡単だ。甘い言葉で釣ればいい。 「そんなところより涼しくてゆっくり出来る場所があるよ。俺の家だ。来る?」 ゆっくりはその言葉にすぐ食いつく。 「ゆっくりしたいよ! おにいさんのおうちに連れて行って!!」 嬉しいこと言ってくれるじゃないの。 こうしてゆっくり霊夢は我が家へ来ることとなった。 「さぁ、ここがゆっくり霊夢の部屋だよ」 「わーい、おにいさんありがとう! ゆっくりするね!!」 俺は物置と化していた一室を掃除して、ゆっくり専用の部屋を作った。 余っていた段ボールを床に敷き詰め、壁も段ボールを張り付けた。 ゆっくりが壁を傷つけないためと、食事が汚いこと・・・早い話掃除がしやすいからな。 ゆっくりの部屋も出来たことだし一緒にアイスを食べることにした。 「ちべたい!! でもとってもおいしいよ!!」 「それはよかった」 しかし汚いな。口のまわりも床もアイスでべったべただ。ダンボールを敷いて正解だった。 アイスを食べた後はお風呂でゆっくりを洗ってあげた。 「すっきりー!」 見てるこっちもすっきりするいい笑顔だ。 夕飯も一緒に食べる。といっても段ボールの柵越しだけど。 「うっめ! これめっちゃうっめ!!」 はふはふと肉野菜炒めと食パンを食べるゆっくりの顔は完全に緩んでいる。 野生ではこんな料理は食べられなかったのだろう。 ずっとうっめうっめと言いながら食べていた。 食事が終ってしばらくゆっくりしてると、ゆっくり霊夢は眠そうにしていたので寝させてあげた。 「明日もゆっくりしようね・・zzZ」 「ああ、おやすみ」 ゆっくりが寝たことを確認すると、俺はゆっくりと準備を始めた。 ~翌朝~ 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくりの声で目が覚める。 まだ6時だってのに早起きだなこいつは。 ゆっくりの部屋の襖を開けるとこっちをゆっくり霊夢が 「おにいさんゆっくりしていってね!! お腹がゆっくりすいたよ!!」 と、挨拶をくれる。 「おはようゆっくり。今朝食を用意するな」 「ゆっくりまってるね!!」 この完全にこっちを信頼している感じがたまらない。 本当はもっとゆっくり懐かせてからにしたかったが、ゆっくり出来ない俺はゆっくりを可愛がることにした。 可愛がるといっても抱っこしてなでなでしたり、高い高いする方じゃないぞ。 俺は昨日用意したたくさんの氷を風呂場の桶に移す。 そしてそれをゆっくりの元へと持っていく。 「おにいさん! そのとうめいなのはなに? ゆっくりできる??」 「ああ、ゆっくり出来るとも」 「ゆっ! ゆっくりしたい!! はやくゆっくりさせてね!!」 ぴょんぴょんと飛び跳ねるゆっくり。その顔は期待に満ちていた。 ああ・・・なんてかわいさだ。そんな顔されたらもう我慢で き な い。 「ゆ”っ!?」 俺はゆっくりを掴むと、用意しておいた空のバケツにゆっくりを突っ込む。 「こわかったよ!! ゆっくりしてね!!」 「ああ、ごめんごめん。これからたっぷりとゆっくりさせてやるよ」 「じゃあゆるしてあげるね!!」 俺はゆっくりの言葉を最後まで聞かずに桶の氷をゆっくりの入っているバケツへ流し込む。 「ゆっゆっゆっ」 コツコツと氷がぶつかるたびに小さく声を上げる。 そしてすぐにゆっくりは氷に埋もれた。 「つめたくて気持ちいいよ!!」 まあ最初はそうだろうな。 しかし一分もしないうちに 「つっつめたいよ!! さむいよおにいさん!! ゆっくりだしてね!!」 ゆっくりは氷の海から抜け出そうとぴょんぴょん跳ねようとするが、それはできなかった。 バケツの入口は透明なビニールシートで閉じていたのだから。 「そこならゆっくり涼めるだろ?」 「ゆ”っくりでぎないよ!! づめだいよ”!!」 知ってるとも。 しばらくは「早く出して」だとか「なんでこんなことするの」だとか訴えかけてきたが どんどんその声は小さくなっていく。 そろそろ限界かなと思いつつ、俺は何か物足りなかった。 正直氷にゆっくりを埋めていても楽しくはなかった。 やはり表情が見れないのは間違いだな。 なのでバケツを逆さにしてゆっくりを解放する。 顔は蒼白で、声も「ゆっ」とか「ぅ」とか言葉は出せないほど弱っていた。 俺は風呂場からお湯を持ってくる。しかしすぐにはかけてあげない。 ただただゆっくりをゆっくりと観察していた。 数分経つと徐々に元気を取り戻していくゆっくり。 動けるようになったゆっくりはおびえた表情で俺を見ながら俺とは逆方向の壁へと後ずさりした。 「どうした? ゆっくりできなかったか?」 「できるわけないよ!! おにいさんとはゆっくりできないよ!!」 おお、こわいこわい。 「そうか、ごめん俺が悪かったよ。ほら、暖めてあげるからこっちにゆっくりおいで」 手でおいでおいでする。 ゆっくりは最初はどうするか迷っていたが、俺のことをまだ信じているのかゆっくりと近づいてきた。 「ゆっ、ゆっくりしようね!」 控え目にお決まりの挨拶をするゆっくり。 「ああ、ゆっくり暖めてやるよ」 ゆっくりをお湯に浸からせてあげる。ゆっくりにはちょうどいいぬるま湯だ。 「ゆっくり気持ちいいよ!!」 「だろう? さっきのはこのための準備だったんだよ」 適当なことを言ったが、単純なゆっくりはそれで納得したらしい。 「うたがってごめんねおにいさん!! れいむはしんじてたよ!!」 嘘つけ。 まあ機嫌がすぐ戻ってよかった。 この先もゆっくりと色んな遊びをするつもりだからな。 嫌なことはすぐに忘れるゆっくりの特性はありがたかった。 さて、今回の氷で凍えさせるのはいまいちだったな。次はどうしようか。 次は生かさず殺さずの状態でのゆっくりを観察するためにご飯抜くかな。 しかしそれはやりすぎかな。 それとも釣り竿でゆっくりフィッシングでもやろうかな。 「おそらをとんでるみたい」って言葉を生で聞いてみたいし。 まあ、焦ることはない。 まだまだ俺とゆっくりのワンダフルライフは始まったばかりなのだ。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/673.html
※注:ゆっくりについて俺設定が入ってます!注意してください。 「はーいみんなー自分の席についてねー」 男がパンパンと手を叩くと騒がしかった子供達は自分のの席に座っていく。 ここはとある小学校、男はそこで教師をやっている。 「今日の理科の授業は実験を行います。みんな予習はしてきたかな?それでは実験室に移動しましょう。」 白衣の服に着替えている男はそう言った。 「ゆっくりと理科実験」 そんなこんなで実験室に移動してきた先生と生徒。 実験室には人の骨の標本や化石、ゆっくりのホルマリン漬けなどが飾られている。 「みんな席に着いたかな?今回は【電流の実験】を行います。復習しますのでP78を開いて下さい。」 今回の実験の目的、どんな道具を用いるのか、その実験をするとどんな結果になるか、などの説明をする。 予習してくれば理解できるはずだが、まあそれを全員に期待するのは酷だろう。 そのため私は実験をする際にはこうして説明をする。 やはり実験内容をプロセスから結果を含めて理解して欲しいからね。 おっと、自己紹介するのを忘れていたね。私はこの小学校で教師をやっている男だ。 特に専門としている科目は無く、国語から社会など何でも教えている。 中でも私は理科が一番好きだ。子供の頃から昆虫の観察などが好きだったからね。 それに今はあのゆっくりという生物もあるし・・・ゲフンゲフン話が長くなってしまったね。 それでは授業の風景をゆっくり見ていってもらおうか。 「・・・ここまでが今回の実験の範囲になります、それでは道具を前に取りにきて実験を始めて下さい。 ちゃんとスケッチと測定した結果をメモしておいてねー」 その言葉と同時に子供達が「わー」と声をあげ、必要な道具を集めていく。 豆電球にワニバサミのクリップに電池・・・そしてゆっくりである。 ゆっくり達は透明な箱に入れられている。その中でゆぅゆぅと寝息を立てながら寝ている。 サイズは大きいものから小さいのまで色々、種類はゆっくりれいむとゆっくりまりさである。 「各班ゆっくりは二つずつ持っていってねー。あ、種類は気にしなくて良いから。」 そう言われて我先にと言わんばかりにゆっくりを持っていく。 こら、そこ箱を叩くんじゃない。ウザイのが起きてしまうぞ。 「・・・ゆ!、ゆっくりしていってね!!」 「ゆ!?ゆっくりしていってね!!!」 あ~あ起きてしまったようだ。 「ゆゆ!?ここはなんだかゆっくりできないよ!れいむをはやくだしてね! 「ゆ~!ここはぜんぜんゆっくりできないよ、まりさたちをおうちにちゃんとかえしてね!! 起きたと思えば早速これだ。全く饅頭の分際で何をいってるんだ。 しかも相手はある意味大人より残酷な子供にだ。 道端であったら即潰されるか、いじりたおして殺されるであろうに。 しかし今のこいつらは実験に使うただの道具である。そのため私も子供達も無視して準備を進めていく。 「おじさんきこえないの?ばかなの?わかったらさっさとあやまってここからだしてね!」 「おなかすいたよ。とっととごはんをもってきてね!もってこないばかはゆっくりしね!」 はっはっはこやつらめ。 危うく私のギャラクティカマグナムが炸裂してしまうところではないか。 だが私も教師の端くれ、生徒の前でそんな姿を見せるわけにはいかないので我慢我慢。 ちなみにこのゆっくり達は加工所から購入したものだ。 ゆれいむとゆまりさはその入手のしやすさから割と安価で購入できる。 他にも種類はあるがありすは直ぐに発情して使い物にならないし、ゆちゅりーに至っては病弱すぎる。 だがゆちゅりーはゆっくりの中では比較的頭も良いので、加工所特性の餡子が凝縮されたゆちゅりーは この実験のような時に助手として使う学校もあるそうだ。 ゆっくりも使いようによって便利なものにもなるみたいだな。 「ゆー!もうれいむおこったよ!!ゆっくりしんでいってね!!!!」 「そうだよ!ゆっくりさせてくれないじじいはゆっくりしんでいってね!!!」 まあ最もこいつらは特に使い物にならない種類だがな それと私をじじいと呼ぶな、まだおじさんの年齢だぞ。 「先生準備ができました。」 「お、そうか。どれどれ。」 そう言って一つの班の生徒のところに行く。 ふむ、最初は電池を並列に繋いだみたいだな。+-は間違ってなさそうだな。 豆電球も・・・大丈夫そうだな。 「うん、大丈夫だよ。それじゃあスイッチを入れてごらん。」 生徒が私の指示に従いスイッチを入れる。 すると電球がぴかっと光る。そこまで激しくはない光だが、電球は光りを放っている。 「ゆ!なんかひかったよ、まりさ。」 「ゆ~きれいだねれいむ~」 などどこの饅頭たちは暢気な事を言っている。 自分達もあとで繋がれるという事も知らずに。 私は生徒にノートに取るように言い、次の実験に移るように指示を出す。 「ゆゆ~♪こんどはもっときれいにひかってるよ~♪」 「ゆゆ!とかいはのありすにいわせるとこういうの’ろまんちっく’っていうらしいよ」 「ゆ!’ろまんちっく’っていいひびきだね。まりさ!おうたでもうたおうよ!!」 「いいねれいむ、うたおうか!!!」 「「ゆぅ~ゆぅ~ゆゆーゆ~ゆーゆぅゆぅゆゆ~♪」」 うざい 果てしなくうざい。これには生徒もイライラし始めてきているようだ。 ちなみに今やっているのは直列に電池を繋ぐという実験で、並列の時より電球は明るく光るようになる。 何故かはここでは割愛させてもらう。 この班のゆっくりに触発されてか、他の班のゆっくりまでゆーゆー歌い始めてきている。 ふむ、これはいけませんね。ここは私自ら実験の実演を行いましょうか。 「はい、みんなここの班に集まってきて~」 ゆっくりとは違って私のいう事を良く聞いてくれる可愛い生徒達が集まってくる。 うむ、私はこんな生徒たちに囲まれて幸せです! 「ゆ、ひとがたくさんあつまってきたよ?」 「きっとわたしたちがかわいいからだぜ」 無視することにする。 「じゃあ今度は銅線じゃなくても電流が流れるのを見てみたいと思います。 ニンゲンにも電気は流れるのは教わったよね?それをゆっくりを使って観察したいと思います。」 ひょいと箱の中かられいむ持ち上げる。 「ゆゆ!?れいむおそらをとんでるみたい!」 「ゆ!まりさもとびたいぜ、おじさんはやくはやく。」 あー床に叩き付けたい。呼び方がおじさんになってるのは媚びてるつもりなのだろうか? まあこれから床に叩きつけるよりおもしろいのが見れるのだが。 私はれいむを机に置く。もっとおそらとびたいという抗議も無視する。 そして私は バチンッ 「ゆぅ”!?」 ゆれいむの右頬にクリップを止める。ちなみにクリップはギザギザしているタイプだぞ♪ 「・・・い”だいい”いいぃ”ぃぃぃいい”い”いい!!!!!!」 「れいむー!?おじさんれいむになにするの!ゆっくりやめてね!」 バチンッ 今度は左頬にクリップを止める。 「ゆ”ううう”う”ぅぅはなじでえ”え”え”ぇぇぇぇ」 「おじさんばかなの?まりさのこえきこえないの?さっさとれいむをはなしてあげてね」 「ゆ”っぐりできないいいぃぃぃぃ」 さて準備は整ったかな。まずは並列繋ぎからやってみるか。 電池を繋ぎスイッチを入れる。 「ゆ?ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」 「れ、れいむううううううううううううう?」 「はい、みんなーこれが並列繋ぎだよーゆっくりにも電流が流れてるのわかるよねー」 そう言って生徒達を見渡す。お、ちゃんとスケッチしてるな、感心感心。 「ゆ”ゆ”ゆっ”ゆ”ゆ”ゆっ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”♪」 イカンイカン、発情して来てるな。 子供達にも悪影響を与えそうなのでここらへんでスイッチを切る。 「ゆゆ?どおしてやめちゃうのおおおおおおおおおお!!!すっきりじだいいいいいいい!」 「はいみんなーこの時ゆっくりの事は無視して次の実験に進んでくださいねー」 一応釘を刺しておく。セクハラで懲戒解雇なんてされたくないしな。 今の親御さんたちは厳しいし。 そう思いつつ私は配線を直列に変える。 「ずっぎりざぜでよお”お”お”お”お”お”お”お?ゆびゃああああああああああああああ!!!!??」 うむ、成功だ。といっても電池を繋ぎ直すなんて小学生でもできるわけだしな。 ここ小学校だし。 「ゆ~れいむきれいだよ~♪」 さすが餡子脳。さっき必死に訴えてた癖にもう忘れている。 というかあれって綺麗に見えるのか・・・? 青白く発光してるゆっくりが白目向きながらビクンビクン痙攣してるのって。 「ま、ま”りざあ”あ”あ”あ”だずげ、ゆぐ!?ゆぐぅぅぅぅぅううううう!!!」 「ゆっ?おじさんれいむがくるしんでるよ、はやくたすけてあげてね!」 自分で助けようとは考えないのか。 ゆまりさはゆっくりの中でも一番タチが悪いという風に聞くしな。 そんなゆまりさを箱から持ち上げ机に置いてあげる。 「そんなに助けてあげたいなら自分で助けに行けば良いじゃないですか?」 「ゆ!まりさはあんなのにさわりたくないぜ。だからおじさんがさっさとたすけるんだぜ。」 早速同属を見捨てやがったのかこのクソ饅頭。 しかも触りたくないのか、確かに妙に狡賢いのだなまりさという種類は。 ふ、そんな甘いこと言ってられるのも今のうちだけだがな。 「みんな直列と並列の繋ぎ方は分かったね?ではゆっくり二匹を別々に繋いでみて観察しましょう。」 「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「ゆっぐりいいいいいぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」」」」」」」」」」 うむうむ、良い生徒達だ。 それと同時に今の惨状を見ていた他のゆっくり達までもが悲鳴が上がる。 授業妨害は先生許しませんぞ。 「おじさん!まりさたちはまだなんにもわるいことしてないよ?どうしてこんなひどいことするの?」 「んー?君達は前は加工所にいたんだよ?それを私達が買い取ったのさ。だから君達は私たちの物だ。」 「ゆ!そんなことしらないよ!!まりさはまりさのものだよ。おじさんはなんにもしらないんだね!!!」 うーん餡子脳じゃもう覚えてないのかあ、調教される前の健康なゆっくりを買い取ったせいかな? それとこいつ今「まだ」って言わなかったか? 「おじさんじゃはなしにならないよ!ここからはやくでてい【バチンッ】っゆ?い、いだだだあああああいいいい」 「先生?こんな感じで良いですか?」 「うんうんOKOK。それじゃあ反対側にも付けてあげようか」 反対のほうにもクリップを付ける様に指示を出す。 バチンッ 「ゆううううううぅぅぅぅ!!!どぼじでごんなひどいことするのおおおぉぉぉぉぉぉ!?」 「さっき言ったでしょう?先生は人の話を聞かないゆっくりは大嫌いです。」 「ゆ”っぐりしたい”い”い”よお”お”お”お”お”お”お”お”」 「他の班のみんなもちゃんと実験を進めて下さいねー」 「「「「「はーい」」」」」 うんうん、やはり少しの知能と人語を喋るゆっくりと人は全然違いますね。 昨今は色々な生徒がいて大変みたいですが。 ふむ、各々の班が着々と実験を進めていますね。 逃げようとしたゆっくりやれいむを差し出して助けを懇願するまりさもいたようですが、大丈夫そうですね。 今回の実験も問題なく「ゆゆゆゆううううびゃああああああがががっがががががあsdfghjkl」 前言撤回ですね。 ゆっくりでもあんな大声を出すのは珍しいですね。 少し見に行きましょうか。 「どうしました?」 「あ、先生ーたかしくんがー」 「へっへーん!先生見てよこれ!!」 「うわあ・・・」 そこには電池十本を直列繋ぎしている配線にれいむが繋がれていた。 当のれいむはところどころ黒ずみで絶叫したまんまの顔で目と口から煙を出している。 「先生すごいでしょ!特にこのゆっくりの顔が・・・あいた!」 私はたかし君の頭を軽く小突く。 いくら世間が過敏になっているとはこれくらいは大丈夫だろう。 「たかし君?いつ先生がこんな実験をしろと言いました?」 「いや、えっと・・・あはは。」 「ふう、今回は怪我が無かったものの君のやった事は危ないことです。それとゆっくりも学校では消耗品なので無駄遣いは止めて下さい。」 「ご、ごめんなさい先生。」 「わかれば、宜しい。」 ふふ、飴と鞭は使いようです。 とは言ってもゆっくりは飴と鞭があってもダメですが・・・ 「先生・・・電池が。」 「ん?ああ、これはダメですね。液漏れしていますね。」 何本か液漏れしてしまっている。 まああんな無茶な繋げ方をすれば・・・あ、そこのれいむはゴミ箱に入れといて下さい。 確か代わりの電池がまだ前の壇上の方にあったはず・・・あれおかしいな? 「先生ーひだりひだりー。」 「ん?ああ・・・」 生徒に言われて左を向いてみると そこにはやけに膨らんで口元をモガモガしているまりさがいた。 「ゆっふっふこへせぇがふぁいとおふぃはんふぁちこはるんだよね」 通訳すると「ゆっへっへこれがないとおじさんたちはこまるんだよねか」か うーむ電池を奪うとはゆまりさはやはり少し知能があるそうだな。 問題があるとすれば口の中に入れたことかな。 ゆっくりはなんでもかんでも口に入れる事しか思いつかないか。 まあ顔しか無いしな。 「こふぇをくぁえしておしくぁったら、ゆっふりまりふぁたちをふぁなしてごふぁんをもってきてぬぇ!」 「断る。」 「ゆふぅ!?」 電池を返して欲しかったらゆっくり達を解放してご飯を持ってこいか。 ふうー・・・やれやれだぜ。 こんな時のために秘密兵器があるのだ! 「どうして?これがないとこまるんでしょ?おじさんたちがこれがほしいならさっさとまりさのいうこときいてね!」 もう通訳するのも生温いわ! いでよ!我が校の秘密兵器・・・ 「ゆっくりしていってくださいね!」 「ゆゆ!?」 じゃじゃーんゆっくりいくさんだ! 希少種なだけに手に入れるのも苦労したんだよこれは・・・ 「ゆっ・・・ゆっ、ゆははははは!おじさんなにそれ?まりさたちとおなじゆっくりがひみつへいきなの? にんげんのくせにあたまわるいんだね!ゆははははははは!!」 貴様の様な駄ゆっくりといくさんを一緒にするでない! 説明しよう! ゆっくりいくさんとは最近発見されたゆっくりの新種である。 モデルとなった人物が礼儀正しいせいか、ゆっくりなのに最初から敬語だ! そして何といくさんはゆっくりの中でも珍しく、いや生物としても珍しく電撃を放出する事が可能なのである。 (※つまりブラ○カである) その特性のおかげで昆虫から蛇などを簡単に捕獲することができ、食料にも困らないのだ! そのため人里には滅多に下りて来ることもなく、命の危険にも晒されないので繁殖することも少なく 捕獲されることは滅多に無い。 では何故そのいくさんを私が所有しているのかというと・・・ゲフンゲフン また話が長くなってしまうところだった、私の悪い癖だな。 「ゆ!せんせいきょうはなんのようですか!?」 「ああ、ちょっとそこにいてくれるかな。」 「ゆっくりりかいしました!」 「ゆははは、りかいしましたって、ゆっくりなのににんげんのいうこときいてるよ!ばがだね!」 私はまりさの声を無視して配線を行う。 いだっ!と声を出し、ぷくーと膨れて涙目のいくさんに謝りつつ、まりさもクリップで挟む。 「ゆ!まりさにこんなのがきくとおもってるの?まりさはほかのゆっくりとはちがうんだよ!わかったらさっさとこうさんしてね!!」 えーとゴム手袋はどこだっけな・・・お、あったあった これを手にはめてと・・・ 「おじさんまりさのこえがきこえないの?だとしたらもうじじいだね!じじいはゆっくりしないでさっさとしんでね」 よしサイズは合ってるな。 そういえばゆっくりは何でじじいなんて言葉を知ってるんだ? じじいなんてほど年取らないだろうに。 など考えつつ私はいくさんの頬を強めに抓る。 「いだいっ!?」 「きこえないのじじい?さっさと・・・ゆっぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?!?!?」 抓った瞬間いくさんから大きな電気が放出される。 そして放出された電気はまりさに向かうわけだ。 「いきなりなにするんですかせんせい!おこりますよ!!」 「はは、ごめんごめん。」 いきなり抓った事にどうやら本気で怒ってるみたいだ。 でもその抓った相手に電気が流れてないのに気付いてないのも ゆっくりであると言うべきか。 「ゆ”ゆ”な、なんで・・・」 まりさは今何が起こったのか理解できていないらしい そりゃあ電気を流すゆっくりなんて信じられないだろな。 私はいくさんに顔を向ける。 「ごめんよいくさん。あとで代わりに’ふぃーばー’させてあげるから」 「ふ、ふぃ、ふぃーばー!?!?!?」 「うん、思う存分’ふぃーばー’させてあげるよ。」 「ふぃーばー・・・」 うっとりした表情をするいくさん。 これが他のゆっくり種と違ったゆっくりいくさんの特性の一つ ゆっくりするのが目的ではなく、ふぃーばーするのを史上の幸福としているのだ! そのふぃーばーするというのどんな時なのかがまだまだ研究中なのだが・・・ 「せんせい、いくはふぃーばーするためならがんばるよ!」 「はは、そうかそうか。じゃあ私が抓ったらさっきのように電気を出してくれないかな?さっきみたいに強く抓らないから。」 「はやくりかいしたよ!」 本人の了承も得たことだし、早速抓らせてもらいますか。 「ゆ!?ゆびゃああああああああああ!!!!」 離す 「ゆ?ゆうううぅぅぅぅ・・・」 抓る 「ゆっぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」 離す 「ゆぅぅぅ、おじさん・・・まりさが」 抓る 「ゆ!?ゆびやああああぁぁぁぁああああああああ!!!!!」 離す 「ゆぐぅ、あ、あやま」 抓る 「ぐぎゃあ”あ”あ”あ”お”お”お”お”お”!!!」 離す これを延々と繰り返す。 徐々にまりさが焦げてきて焼き饅頭の良いニオイが出てくる。 帽子も金色の髪の毛ももはや消し炭化している。 「お、おじさん・・・まりさがわるかったよ・・・あやまるよ、ちゃんとこれもかえすよ・・・だからゆっくりさせて・・・」 「いくさん次は最大出力でお願いね♪」 「ゆっくりりかいしたよ!!!」 「ゆ”っぐり”り”がい”しないでえ”え”え”え”え”え”え”え”ゆっぐり”ざぜでえ”え”え”え”え”え”!!!!」 抓る 「ゆぐごあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あああ%あ#ぎ$ゆ&」 ふっ、饅頭が完璧に炭になったな。 ん、生徒達がこちらを変な目で見ているな。 イカンイカン少し自分に酔ってしまっていたようだ。 教職者としての勤めを果たさなければ。 「みんなー、ゆっくりいくさんはこのように危険なゆっくりなので、道端であってもいじめないで上げてください 。見つけた場合は先生が保護しますので知らせて下さい。」 「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」 うんうん、良い声だ。 ―――――――――――――― 授業の時間も終わりに近づいてきて、片付けに入っている。 勿論ゆっくりもだ。 どのゆっくりも意気消沈しており、目に光が無くぶつぶつ言ってるゆっくりから ヘラヘラ笑っているゆっくりもいる。 「先生このゆっくり達どうすれば良いですか?」 「ああ、そこに重ねて置いて下さい。」 「?わかりました。」 ゆっくりがドンドン重ねられて山になる。 これだけ重ねれば十分かな。 「先生これから何をするんですか?」 「まあ見ててごらんよ。」 「?」 ゆっくりの山に上からライトを点け照らしてみる。 「さあいくさん、存分にフィーバーして下さい。」 「ふぃぃぃぃばぁぁぁぁぁぁ♪」 いくさんがゆっくりの山の頂上を目指して上っていく。 「いたい!」 「ゆっくりさせてえええ」 「むぎゅ!」 「おうちかえるううううう」 「これはゆめなの、れいむはゆめをみてるの・・・」 いくさんが頂上に到達した。 さあいよいよ始まるぞ。 いくさんが力を溜めて、その溜めた勢いでジャンプして・・・ 「~~~~さたでーないとふぃーばーーーーーーー!!!!!」 「「「「「ゆぎょあ”あ”あ”あ”あ”あ””あ”あ”あ”あ”」」」」」 おおバチバチ光ってる。花火みたいだな た~まや~と頭の中で言ってみる。 「すっきりー!」 いくさんもすっきりできて良かった良かった。 あとはこの出来上がった焼き饅頭をと パクッ 上手い!味と香り共に申し分ない。これは加工所に一つ持って行ってみるべきだな。 しかしこの焼き饅頭の山全て持って帰るわけにも行かないしな。 「みんな~おいしい焼き饅頭ができたよ~持って行って良いよー。あ、お父さんお母さんには内緒にしてね。」 こうして私の授業は過ぎていく。 次の実験は何をしようかな? 確か電気を流すと銅が熱を持つのは教えたかな。 よし、次は熱を持った銅線でスライスしよう! そんな事を考えつつ私は帰路に付いたのだった。 あとがきなるもの お初です。SSを書くのはこれが初になります。 さてさて今回の理科実験ですが、作者の小学校時代にやった実験の記憶に 基づき書いてるので、世代によって色々違ってくると思います。 そして最後に銅線で熱もった物の実験について語っていますが これも実験で発泡スチロールをスライスしたりもやりました。 本当は電流もスライスするのも子ゆっくりも用いてやりたかったのですが・・・ 力尽きましたorz 遅筆もよいところです。職人さん達にはただ脱帽します。 あとゆっくりいくさんのネタは24スレの 614氏から拝借しました。 このSSに感想を付ける